『笑う警官』の分析

新訳刑事マルティン•ベックシリーズの頂点『笑う警官』を読了。秋刀魚を食べるように、皮や骨や身や内臓を分解してみたい(^^)

翻訳者柳沢氏のあとがきを読むと、二人の著者の書き方の解説があった。夏休みの静かなストックホルムで、子供達を田舎に預けて二人(Pヴァールー、Mシューバル)で書き出した。

「初めにあらすじを30章に分けて一緒に作り、得意分野をそれぞれが手書きし、その後それぞれが相手の書いた部分をタイプすることによって作品全体を掌握するという手法で共同執筆した」

なるほど…。まず30章から攻めてみよう。ぼくは「1章 11月13日の夜、ストックホルムはざんざ降りだった。」「2章 雨だ。」と各章の冒頭の1行を書きぬき、章ごとのあらすじを1行でまとめてみた。すると、30章の構成は大きく4つほどに分かれていた。

1章から6章までが事件の発端。
7章から19章までが捜査のこう着状態。
20章から27章までで捜査が絞られる。
28章から30章が犯人逮捕までの大団円。

全体の9割までは読者を惑わせている。「見えない」「つながらない」状態で最後まで引っ張り、終章3章ですべての伏線をつなぎまくる。

もう少し丁寧に見てゆくと、「地道な聞き込み捜査からの手がかり」「犯罪捜査のプロのデータや嗅覚による進展」「当てずっぽうや、ひょんなところからくる幸運」そして「殺された刑事の人間性から見えてくること」。これらをちりばめておいて、クセのある刑事たちの個性のぶつかりあいの舞台上で、すべてをつなげてゆく。

出だしの1行をずらった並べて読むとリアリズムが楽しい。この分析は今回思いついたのだが、あんがい本質がわかる。各章の終わりの1行も一緒に書きぬくといいかもしれない。

書き方はどうだろう。二人で話し合いながら書くのではなく、二人は競争関係だった。「相手を出し抜こう」「伏線を書く」「渡す」「相手は答えを書く」「返す」「じゃこれでどお?」とテニスのラリーのような書き方だったのだろう。スリリングになるわけである。

他にもごちょごちょ分析したが、マアこのくらいにしておこう。自分としてもっとも参考になったことは「読者の中で答えを組み立てさせる」やり方である。答えをポンと提示されて「こうすればあなたの人生は良くなる」という本ばかりだが、そんなんでよくなるわけがない。考えない人は絶対に良くならない。楽しく考えさせる本は、その意味で福音なのである。

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