「みんなの物語」と「自分の物語」

いろいろとホッとして、昨夜はBrandi Carlileを聴いた。

The Cavernで行われるコンサートBluegrass Undergroundのライブ。アメリカのテネシー州の山あいの洞穴舞台The Cavernは超素敵である。ぜひ行って観たい。そして、このBrandiのライブは素晴らしい演奏で、観客とのコーラスも実にいい。

Brandi Carlileといえば「The Story」が代表曲であり、近年はそれに「The Joke」が加わった。この2曲はテッパンでコンサートで演らずには終われない。どちらも良い曲だが、昨日はあらためて思ったことがあった。The Storyは「みんなの曲」で、The Jokeは「Brandiの曲」だと。どういうことか、まずThe Storyの出だしを読んでください。

The Story
All of these lines across my face
Tell you the story of who I am
So many stories of where I’ve been
And how I got to where I am
But these stories don’t mean anything
When you’ve got no one to tell them to
It’s true… I was made for you

顔に刻まれた筋(すじ)はすべて
私が誰であるかを物語る
私が訪れた場所で起きたたくさんの物語を
そして、どうやって今の場所にたどり着いたのかを
でも物語に何の意味もないの
語る相手がいないときには
あなたがいるから私がいる、これは真実
(りり〜郷訳)

顔の皺や筋に刻まれた体験とは、だれもがもつ喜怒哀楽である。それを語ろうするとき誰かが必要なのだ。それが自分の体験よりもっと大切だと歌い上げる。六行目の「私はあなたのために作られました( I was made for you)」が素晴らしいフレーズ。だから観客から合唱が起きる。

この曲は、シンガーソングライターBrandi Carlileの作詞作曲ではなく、バンドメンバーの(双生児のひとり)Phil Hanserothの曲である。だがBrandiの熱唱と共に代表曲になった。もうひとつの代表曲はBrandiの作品である。

The Joke
You’re feeling nervous, aren’t you?
With your quiet voice and impeccable style
Don’t ever let them steal your joy
And your gentle ways
To keep them from running wild

ナーバスになってるんじゃない
穏やかな声と完璧を目指すその生きかたでわかる
あなたの喜びと温厚さを
やつらに獲られないように
やつらが調子づかないように
(りり〜郷訳)

貧乏で引越し続きの家庭(モーターハウスの時もあった)に育ったBrandiが、いじめられていじけて、喧嘩ばかりした体験がベースになっている。この後は「ふざけるんじゃねえ!」という絶唱が続く。この曲も素晴らしいのだが、キーが高いことと歌詞の内容から合唱にはならない。観客はBrandiの絶唱を聴き惚れるという曲になっている。

そう考えて気づいた。Brandi限らず、多くのクリエイターには「みんなの物語」と「自分の物語」の二つの作品がある。よく売れるのは「みんなの物語」だが、それが売れるためにも「自分の物語」という深みが必要なのだ。二つはセットである。

私がようやく書きあげた江戸のトランスジェンダーの物語は「自分の物語=8」で「みんなの物語=2」くらいだろうか。次はその逆を書きたい。

腱鞘炎がひどいことになりました…キーボードも壊れそう。

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