人を描く:接着剤を知る

真の書き手とは知ろうとする人である。知ろうとせずに聞き書きするのでは、テープ起こしの編集に過ぎない。

ある名医がいる。その分野では日本トップ、さらに世界数十カ国で彼の創造した手法が広まる。それゆえに、彼の生涯は、方々で既に記事になり本も出されている。語る方も慣れたもので、自分の生涯を語るのに立て板に水のところがある。だが媒体が違うし、読者も過去記事と100%は重ならない…いやいや、ビコースその人を書くのが仕事だからだ(笑)

いや本当は違う。誰もが書かなかったその人を、少しでも出す努力を傾けるのが、真のライターの仕事である。それでないと意味がない。

ではどう書くか。エピソードがある。「土台:才能や環境」「成長:苦しみや努力」「転機:悩みと信念」そして「業績:誉れと尊敬」と、結局、先人達と似たように書きあげてゆくことになる。もちろん筆力で上回ることはできるが、得てして修飾の上手い名文は読まれない。お化粧だからだ。ではどうするか。

着目すべきは「土台」と「成長」と「転機」と「業績」のそれぞれの隙間である。そこに何があるのか?それをつなぐ「接着剤」は何か?

それはその人の意思であり行動である。具体的には「発言」「文章」「気持ち」「出来事」「別の人の証言」などがある。それを聴き、調べ、洞察する。時には想像を入れても描いてゆかねばならない。「その人が考えた軌跡」「踏み出した一歩」にこそ秘密があるのだ。書き手がその人を知ろうとせずに、インタビュー仕事だとして、ただ言われたままを書いて、それで何が読者に伝わるのだろうか。読者が好奇心を掻き立てられて読み進めてくれるだろうか。そもそもそれで真の書き手と言えるのだろうか。

書かれる人の苦闘が深ければ深いほど、大きければ大きいほど、書き手の苦闘もまた深く大きくなるのである。それは正比例、相関関係にある。だから「あ、この人はこうだったんだ!」っというのに気づける瞬間が嬉しい。

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なぜこやつはこんな高貴な顔をしているのか…それを知りたい。

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