IKEAの本質をポスト・スクリプトのエッセイに。

今日はビジネスメディア誠で連載する“うふふマーケティング”のこぼれ話です。

そこは生活を設計する場 IKEA人気の秘密

日本でも次々と店舗をオープンさせている、スウェーデンの家具チェーンIKEA。世界中で人気を集めるIKEAだが、何が消費者たちを引きつけているのだろうか。新三郷店で行われたプレスカンファレンスに参加して、その秘密を探った続きはこちら


今週のエッセイのテーマはIKEA。外資系の同社が、8月1日を『やっぱり家の日』に制定し、同時に今年のカタログを発表するという記者会見に出かけた。東京駅から新三郷店へのバスに乗り込むと、たくさんの報道陣がいらした。わたしのような素浪人ライターはいない。実際、記者会見で質問をされたのはN経済新聞社とA大新聞社の記者であった。

でも気後れはまったくなし。なぜならわたしはIKEAフェチ。IKEAがなぜ楽しいか身体で知っていると自負している。エッセイにも触れたけれど、米国にちょっといたときにIKEAの洗礼を受けて、買い物がなくてもよく通った。IKEAにはマーケティングの本質があると思った。

だからバスの中でのIKEAの歴史DVDもじっくり勉強した。そのときのわたしのメモを再現しよう。

IKEAといえばパーティクルボード。スプルース(マツ科の針葉樹)のチップと松のおがくずを混ぜて高温ドライヤーで乾燥させ、選別工程、接着剤を混ぜて50mm厚にプレス。温めて固めて60度まで冷やしてドでかい板の出来上がり。それを製品別サイズにカットし、およそ55ケ国、1,000の協力工場に運ばれて製品加工。まさにグローバル効率。

こんなIKEAフェチだから、悠々と記事を書こう、いや書けると思っていた。


【なかなかまとらまず…】
だが…実は難航した。書いては消して、パラグラフを入れ替えて、うんうん唸って…。どうしてもしっくりこない。2,500字ではまとめきれない。う〜んどうしよう。土曜の午後のこと。

記者会見を紹介中心でいくか。でもわたしは記者ではない。あるいは記者会見のあとに催された“ざりがにパーティ”を書くのはどうか。でもそれだけではIKEAフェチにはもの足りない。

会見をリワインドすれば、N社の記者の質問は「値下げ品目数と値下げ率」だった。翌日の新聞にその内容がでていたが、やはり“経済新聞”だなあと思った。A社の質問は「IKEAの家具の組立サービス」について。IKEAの家具づくりむつかしいという人が多く、もっと簡単にできないかという趣旨だった。「IKEAの家具が作れないのか」と思わずつぶやくと、隣の女子記者が同調して「あれがむつかしいのならアウト」て言っていた(笑)。

媒体によって関心事項が決まっているのは書きやすい。わたしは背負っているものがない分自由なのだが、自由とはある意味で規律が必要なのだ。

【本質をポスト・スクリプトのエッセイに】
それで思い立って、土曜の夕方、再びIKEAに行った。現場には本質がある。そこから考え直そう。


エントランスからのんのんと歩き出すと、すぐに“IKEAの本質”は見つかった。ここにしかないお客さまの姿だ。興味しんしんの表情や「わたしはこれ」「いやこっち」なんて会話。手にとり座り、測り色を比較し、開け閉めして…五感の買い物動作。他の家具店ではほとんど見られない光景だ。

これだ、と思った。わたしが共感してフェチになったのもこれなのだ。

自分の気持ちやお客さまの気持ちを忘れると、文はろくなものにならない。それこそ「とりあえずこれでイケヤ」みたいな文になってしまう。


IKEAのこの椅子『PSセルマ』のPSは“ポスト・スクリプト”の略。つまり“追伸”である。歴史を創った先人たちへのオマージュをデザインした。わたしのエッセイもまた先人の思想、製品、サービスに対する「追伸文」である。だからこそ先人やその創造物に最大限敬意をはらって、書かないと。今日は以上です。

PS *******************

IKEAジャパンのリージョナルPRの岡田さまから、こんなメールを頂きました。

プレスカンファレンスの原稿もお書きいただきどうもありがとうございます!
大手ポータルサイトに次々にアップされ、<すごい!>と
感嘆です。
また長くイケアのファンでいてくださり、心よりお礼申し上げます。

感激しました。どうもありがとうございます。
拙文ながら、最近はYahoo、msn、ライブドア、ミクシィなど転載をよく頂いております。どうもありがとうございます。
「ぐっときた」ことを「ぐっと書けた」原稿でしょうか。冷静に自己投入ができたときとも言えます。文を書くとはテクニックだけではなく、気持ちの問題でもある。文は嘘をつきません。


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