虫が飛ぶ季節になって、うちのピノ子も虫がうれしくて仕方ないようで、名作絵本を借りてみた。
『スイッチョねこ』は白いやんちゃな猫が主人公。秋が近づいて、虫がいい声で鳴くので、きっと食べたら旨いにちがいないと思った。ところがいつまでたっても虫が来ない。虫に近づくと逃げる。じっとしているとつかまえられない。おネムになった。夜中に起きて、あーってアクビをすると、虫が口に向かってきた。のみこんだ虫がお腹でスイッチョ、スィッチョと鳴くのでスイッチョねこと呼ばれるようになった。
へんなものならいざ知らず、美しい声の主ならのんでみたい。お腹の中で歌ってほしい。cotoba屋としては言葉をのみこんでみた。たとえば次の一節。
「なおりましょうか、先生。」
と、おかあさんねこがもうしました。
「まて、まて、ちょうしんきできいてみよう。
そこでおね。むねをお出し。」
「もうしました」というていねいな言葉づかいがほほえましい。そして「おね」と「むね」という微妙な韻の踏みもくすっときた。ひらがなの字面を考えた韻ですね。次の叙述もいい。
ほんとうに、まもなく冬がくることでしょう。
この夏生まれたばかりの子ねこたちは、まだ、冬に
あったことがなく、しもや雪も知らないのでした。
「冬にあったことがない」の表現もいい。さすが文豪大佛次郎である。もちろん朝倉摂の絵もいい。
飲み込んだ虫とはなんだったのだろうか。大人流に言ってしまうと、それは好奇心なのだろう。一日一日、一季節一季節、子供は大きくなってゆく。いろんな虫をのみこんで暮らしや体や人間関係を学んでゆく。知っているよ、と言ってだんだん飲み込まなくなっていく。
うまく文が書けるようになったなと自己満足をせず、できるだけ技は捨てて幼稚になりたい。自然に書けるように、スイッチョと鳴くものを目でのもうと思って図書館から借りた本、にゃわっときました。
うちのピノ子はスースー猫。
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