やなぎわら通り

お昼前にやなぎわら通りに着くと、三和印刷のOさんがよろよろと神社の前を歩いていた。

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Oさんは神社猫を見やり、次いで境内を見おろした。そして往来の反対側のボタン屋をじぃっと見てから、三和印刷のビルに戻っていった。あと営業は8日。名残惜しいのだろう。彼は心臓に持病があるので、ゆっくりゆっくり歩いてほしい。(※画像は別の日に撮ったもの)

彼 だけではなく、この神田須田町二丁目を行く人は誰もが、やなぎわら通りのエーテルみたいなものを吸い込んでいる。どんな成分かこう言えば伝わるだろうか。 古きもの、根付いたもの、変わらないもの、スジが通ったものが、猫のヒゲをピクピクさせて、ひっそりbutしっかり生きている。その証拠に誰もがここに来 るとほっとする。ゆったりできる。ありがたいと思う。

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通りの中心が柳森神社であることはまちがいない。正確に言えば、江戸の昔から延々と続く氏子の家々が自負をもって保存し伝承してきた。だが時代が変われば風景は変わる。最後の大正•昭和初期の建物の海老原商店も遂にゆく。

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印刷会社のビルもどうやら「地寄せ」されるらしい。経済効率というものが「正しい」と信じている人にとってはそれは正しい。だが合理的とか効率的だけでぼくらは生きていない。むしろつい数十年前まで、何世紀にもわたって、その正反対の価値観で生きてきた。

ぼくが書いている物語の登場人物にこう語らせてみた。

「今よりもっと自由に息できた時代があったんだから、そのままでもいいの。昔だとか古いのが悪いなんてことない。それの方がよければそのままでいいのよ」

物語はけっこうおもしろくなってきた。読むと心臓の鼓動が楽しくてドキドキするようなものにしたい。Oさんにも読んでもらいたい。ぼくにしか書けない物語、あとちょっと。

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