今日は企業の経営者と話していて、当たり前なことに気づかされた。背筋を伸ばされる気がした。
それは「後継者づくり」である。
A社は半世紀以上前に創業された会社で、そこそこ技術力がありニッチな市場で存在感を示してきた。市場変化に対応しきれなかった経営のつまづきで、オーナー然とふるまった社長が退任、新社長が就任した。このときのバトンタッチは、新社長の実績ゆえであるが、本命の後継者がつまづいたこともあった。つまり、旧社長の息のかかった人が後継者になったのではなく、実力と運で社長が決まった。
ぼくはその会社の屋台骨事業を再生するプロジェクトに関わっている。屋台骨製品の再開発が目的だが、真のねらいは後継者づくりだという。
現社長も幹部たちも、みんな57歳以上のサラリーマンである。65歳の定年まであと数年でリタイア。それまでに後継者を育てないといけない。サラリーマンなのに自分達がいなくなる将来に責任をもって、ちゃんと人を選んで育てようとする。
当たり前だろうか。そうかもしれない。でも欧米の会社ではこういう慣習はない。経営者は雇うものだからだ。日本的な企業人がここにいる。なんだか感激した。
では何を後継するのか?
会社の技術やノウハウや理念?そんなものはTPPや少子高齢化ですっかり塗り変わる。つまり「会社を作りなおす人」を選んで育てないとならない。この幹部たちはそこまで見てこのプロジェクトを組織している。
旧社長のように「息のかかった人」を選ぶのは簡単である。真に有能な人を選ぶのは大変である。そういうまともな会社が日本にはまだあるから、世界に通じるんだろうな。
ということは、日常業務からすでに後継者争いがあるのだ。ちゃんとした会社なら、あなたはちゃんと見られているはずだ。それに気づければ、日々手を抜くことなく、働こう思えるはずだが…
猫は気楽だにゃあ…