ケイトリン•ジェンナー

幼少から女装をしていたが、運動神経に恵まれたおかげで、五輪の十種競技に出場し金メダリストになった。全米のヒーローでセレブのブルース•ジェンナーが、世間を驚愕させたケイトリン•ジェンナーにいかになったかを書いた『The Secret of My Life:Caitlyn Jenner』。たくさん気になることはありますが、3つ挙げます。

一つは「3度の結婚」。最初の2回の結婚では隠して結婚したがカミングアウトして離婚。3人目では最初からカミングアウトしていたが離婚。結婚すれば女になりたい自分が隠せると思った。だが結婚は隠れ蓑や解決策としてするものではない。だから隠せないのですが、どうも結婚というものは本当の自分はどんな人なのか?を突きつける。それに直面して心理的に苦しむ人は実は多いと思います。私も結婚すべき人じゃなかったと今は思います。

二つ目は「65歳」でのトランスジェンダー。ケイトリンは40代で髭や胸毛を脱毛し、喉仏も切除し、ホルモン療法も開始して女になろうと思った。しかし3度目の結婚を前に迷って女を諦めた。結局60代になって性転向したので、こう書いている。

Please I am begging you, don’t ever let your life succumb to what others think. Do not give into fear, as I did for so many years. Do what is in your heart and soul. I guarantee you will never regret it. Instead, you will have the very opposite, not an imagined life but a life of new possibility, a true life. The more we celebrate our difference, the more we will be celebrated. There are too many of us out there anyway just waiting to bloom and blossom. The status quo of society will just have to get used to us. (P.308)
どうかお願いします。他人の考えにあなたの人生を屈服させないでください。 私が長年してきたように、恐怖の中に自分を閉じ込めないでください。あなたの心と魂に従ってださい。あなたはそれを決して後悔しないことを保証します。代わりに、あなたは正反対の、想像上の人生ではなく、新しい可能性にみちた人生を生きることになります。私たちが他の人と違うことを誇れば、私たちは誇らしい存在になります。開花するのを待つ私たちのような存在はたくさんいます。社会も次第に私たちに合わせていくでしょう。

あなたがもしも私と同じくシニアで性転向したいならば、この言葉に勇気付けられるでしょう。三つ目は「見た目重視」。彼は女になりたい気持ちをこう書いています。

I like to look good. It is important to me. (本書P198)
私は見栄えをよくしたい。それが重要だから。

彼は40代で鼻の整形手術をし、60代で決意した時、再び整形した。ハンサムゆえに美人になれたと思っていたのでちょっとがっかり。でも見栄えを良くしたいのは非常に共感を覚える。説明がまだつかないのですが、私も見た目重視。1ミリでも女ぽくなりたい。綺麗になりたい。自分の中にいる女を外に出してやりたい。この正直な思いの発生源はまだよくわかりません。

もうひとつ、本書の「構成」に妙があることを指摘しておきたい。

本書は「トランスジェンダーとなった現在の出来事」と「過去の半生の時系列の出来事」を交互に並べています。今こうなったのは過去にこういうことがあったから、過去にああいうことがあったから今、こうしている。これは読み手に謎解きを誘い、なぜトランスしたかも納得させる流れです。自伝にもこういう書き方があったのかと思いました。

最後に本書からもうひとつ気になったフレーズを。

If you can’t be comfortable with yourself, how can you truly be comfortable with anyone? (P.273)
自分に正直になって、自分のことが好きになれば、他のひとにも正直になれて、心を開けるようになる。

これもすごくわかる。私はずっとずっと自分が嫌いでした。そのときは自分が閉じていて、他人が入ってこなかった。人の言葉に否定的で、ひねくれてしまうところがいっぱいあった。ストレートに感情を出せなかった。性自認が女であると感じた今、楽になりました。こう思う、こうしたい、こうしたらいい、が素直に出せるようになり、なによりも自分を大切に思えるようになりました。

すべてのトランスジェンダーに本書を勧めます。翻訳したいくらいだな。

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