今夜はハロウィンだという。空に満月がぽっかりというニュースで知った。
なんと綺麗なお月様だこと!月というと思い出すのはあの歌。
う、えを向いて歩こうぉ〜♪ 涙がぁ〜こぼれえないようおおに
泣きながら歩くぅ ひとりぼっちの 夜ぅ
悲しみは〜星のかげに 悲しみは月のかげにぃ!
(懐かしの忌野清志郎節で)
なぜハロウィンで月なのだろうか?
それは月には貞淑な女神ダイアナがいて、悪霊のヘカテもいる。ヘカテは魔女の保護者であり、嵐を支配する悪霊である。このハロウィンの日に限って、優しいダイアナはヘカテがシャバに出ることを許す。ヘカテは月を眺める人がたくさんいる地球に、いたずらにやってくるのだ。ハロウィンで仮装するのは悪霊のふり、いたずらとは魂を奪うこと、されたくないならお菓子をよこせ、お菓子は魔除というわけだ。
で、子供達や若者たちが悪霊のコスチュームを着て練り歩くわけだが、僕はとてもそんな気持ちになれない。やっぱり夜はひとりぼっちなのだ。泣きながら歩いて悲しみを星に重ねる、それが夜だ。都会では星は数えるほどしか見えないから、悲しみを重ねていくと、すぐに星が足りなくなる。
月に重ねる悲しみはなんだろう。それは太陽の不在だ。
太陽は人を明るくする力、温めるエネルギー、行動させる動力源だ。だが夜になると、太陽は姿は見せずに月を照らす。あたかも月がひとりぼっちであることを強調するかのように照らしやがる。なぜそなたはそんな苦しみを月に与えるのか。だから月はますますひとりぼっちで寂しくなるんだ。月は真っ暗のままでいいと叫ぶ。真っ暗なら真っ暗な道があると。
そこで真っ暗に燃えた月は、年に1度、悪霊を放つ。ヘカテである。姿形は悪霊そのものだ。骸骨や、光るランタン、導火線に火がついた爆弾、そして黒く光る星である。だがその主成分は悲しみなので、人間に悪さはしない。むしろ悪霊ヘカテはこう言う。

いたずらしませんから、ごちそうもほしがりませんから、きっかけをください。
きっかけとは何だろう?悲しみの黒い星にいても、太陽に無遠慮に照らされていじめられても、悪霊は自ら光りたいと思っているのだ。光るきっかけが欲しいのだ。小さな炎が欲しいのだ。燃やして欲しいのだ。燃え尽きて炭になろうとかまわない、もう一度生き直すきっかけをください、と言っているのだ。
だからこそ1年に1度、ハロウィンに悪霊は地球上を跋扈する。ひとりぼっちのコスチュームを着ていればすなわちそれは悪霊ヘカテだ。ごちそうがやれないなら、せめてひとりぼっちにしてやろう。
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