インタビューした人を起こす

休日のはずだよね 5月3日は原稿記念日。朝8時から夜7時までテープ起こしざんまいで…疲れ果てた。

tape okoshi

インタビューを書くライターにとって、テープ起こしは柏餅のアンコ、鯉のぼりのポールである。つまり欠かせない存在。いくらぼくでもカセットテープなんて使うわけはなく、iPhoneやICレコーダーで録音して、MacのiTunesで聴いて起こす。

秘伝のコツを教えよう。画像のF8キーを見たまえ。マスキングテープで印を付けている。これはポーズボタンだ。F7とF9の長押しで、倍速(以上?)巻き戻しができる。一時停止をつい間違えてF7なぞを押すと、スタートに巻き戻されてしまい「このやろう!」と天に向かってツバを吐く羽目になる。だから目印が必要なのだ。

これ以外に特段コツはない。聴いてはJeditのテキストにひたすら書き込む。それだけ。それが難儀だ。動脈血栓になりかけたら体操したまえ。

なのにテープ起こしでいいアプリに出会ったことはない(interviewやcasual trancecriberは疑問符、Perfect listenerは使ったことなし)。だがベーシックなソフトで十分だ。そもそもライターはテープ起こし屋じゃない。インタビューを読ませるよう、再構築する人なのだ。

そこでアプリよりもっと大切な秘伝のコツを教えよう。なぜぼくは2つファイルを開けるか?左側は“リサーチ記録”。聴きながら会話内容を深めてゆく。がんがんリサーチする。その内容をコピーしたり、PDFファイルごと保存する。テープ起こしとは聴くだけではない。調べて理解しどう書くか考えるのだ。

だから脱線する量と質がインタビュー記事を深める。行間に何かを埋めこんでゆく。さっきもインタビューした人が尊敬する人のひとりで、ずいぶん脱線した。

kiyoshi kurokawa

黒川清氏。東京電力福島原子力発電所事故調査委員会の座長、有名な592ページの“黒川レポート”をまとめた。そこには原発事故が起きた核心がある。それゆえ日本の政界官界で圧殺された。だが英語版レポートは今も世界で読まれる。すごく切れる大きな器の人。黒川氏の人となりを知る。インタビュー者の心が想像できる。文章が深まる。

「プロと素人の差がない」と言われ、ライター費用も下落しているが、素人は“起こし屋”でプロは“創造屋”である。「インタビューした人を起こす」それがぼくがやることだ。

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