行列マーケティング

2006年11月に『マーケティング・ブレイン』に集中連載で書いた『行列マーケティング』を再掲します。初出はこちら

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行列マーケティング/旬ネタ 【1.行列ポジショニング】

米国全土では、11月17日の某商品発売までの数日間、各地で凄いことになっていた。1週間も前から並ぶヒマ人(失礼)が多数出て、マンハッタンでは大々的にテントが張られ、警官も出動し、コネチカット州のウォルマート裏では発砲事件まで発生した。その商品の発売を先行させた日本では、11月10日夕刻から11日未明にかけて、やはり徹夜行列組がたくさん出て、一部の行列は混乱した。

それはソニーPS3での行列騒ぎ。国内外で生産が追いつかず、発売時の初期供給数を絞り込んだのが原因といわれるが、それにしてもたかがゲーム、されどゲームなのだろうか。

対抗馬の任天堂Wiiは19日、全米で先行発売され、40万台を売り切った模様である。こちらでも行列ができたが、需給バランスが整ったせいか(それが良いのか悪いのか)それほどの混乱は報道されていない。12月2日の日本での発売を前に、熱心なファンはいつから並ぶのだろうか。

何を隠そうわたしはゲーマーじゃない。単なるマーケターもどき。だからゲームよりも「行列」に興味がわいた。行列とは予備購買行動であるだけでなく、行列を見る人には購買促進行動でもあり、見られることは購買完結エネルギーである。並ぶ何とかに見る何とか(というのか?)、とどのつまり、行列は商売繁盛の基本である。

年末に向かって並ぼうぜ!という行列も増えそうなので、今週の旬ネタは「行列マーケティング」を取りあげる。ネタ予定は次の通りである。

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1.行列ポジショニング: エンタメ度とレア度で斬る行列特性
2.顧客不満足度を増す行列マネジメント:管理するという間違い。
3.行列ホスピタリティ: 行列をもてなす。
4.行列づくりのテクニック: 悪魔のテクニックはお奨めできない
5.行列の科学: 顧客の心の中に高順位をつくる。

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【1.行列ポジショニング : エンタメ度とレア度で斬る行列特性】
ひとくちに行列といってもさまざまな種類がある。楽しい行列、嫌々立つ行列、一刻を争う行列、生活のための行列・・・・そこでまず、行列をポジショニングしてみよう。

この図ではタテ軸をならんで求める商品やサービスの稀少性から「レア度」、ヨコ軸をエンターテイメント性の高低を示す「エンタメ度」とした。二本の軸に仕切られて、A・B・C・Dの4つのタイプができる。

【タイプAとB エンタメ度高し】
まずタイプAは「パブリシティ行列」と呼んでみたい。PS3やWiiなど話題の商品の行列に代表される、購買やエンタメ目的の行列である。行列する時間も、行列の長さも、一定限度長いほうが並び手にとって並びがいがある。それがパブリシティにもなる。

ポイントは「もしかしたら、行列しても目的が達成されない(買えない、予約できない)かも知れない」という心理的な圧迫である。この圧迫があまりに強すぎると供給者への不満になる。圧迫が小さいと行列が短くなる。情報をいかに漏らしていくか。ティーザー=じらしのさじ加減が重要である。

次にタイプBである。これを「劇場型行列」と呼びたい。ディズニーランドの人気アトラクション、ゲームショウでの新発売ゲーム、コスチュームまできめて並ぶ「スターウォーズ」といった話題の映画、死亡事故も起きた花火会場での行列などがここに入る。エンターテイメント度は高いのだが、並べばいずれ乗れる/プレイができる/観れるので、実はレア度は高くないのである。

余談だが、わたしは中学1年生の頃だったか、リンダ・ブレア主演の恐怖映画『エクソシスト』の封切りでの行列を思い出す。劇場をとりまいて並んでいたが、行列づくりもマナーも悪く、オシクラ饅頭になってケガ人も出た。押されたわたしはいつの間にか映画館の中にいた。前売券だった。ところがやっとたどり着いたのは2階席の後ろ、立ち見だった。

この映画の有名なシーンのひとつに、悪魔にとり憑かれた少女の頭が、ぐるりと360度回転するシーンがある。だが小学生だったわたしはまだ背が低く、立ち見で前の人の頭しか見えなかった(笑)。ひどい。あれほど混雑していた映画を観たのは、後にも先にもエクソシストだけである。話題の映画は観ないというアマノジャクになった機会でもある。あのとき世間は、オカルト・ブームにとり憑かれていた。

【タイプCとD エンタメより怨嗟】
タイプCは「ご指名型行列」と呼びたい。わたしの家の近所の行列のできる小児科医がその事例である。その『はやしXXXクリニック』では、早朝から整理券を求める人でにぎわう。パパが車で乗り付けて、整理券をピックして、申し込みはママが8時頃からだ。子供の熱とあらば仕方ないのだろうが。

このタイプは主にサービス業であり、供給が絞られているので需要期にあふれてしまう。行列のできる法律相談もこの口である。販売促進型に近い面もあるが、エンタメ度は低い(病を治す、税金を減らす、資産を増やすetc.)。

最後に「怒りの行列」はDタイプ。日常的な反復行動なので行列をしたくないのにしているというもの。代表的な事例はATMの行列である。東京三菱UFJの支店はどこも混雑しているが、特に新橋店はディズニーランドのアトラクション施設のように、人の腸のようにくねった行列をつくらせているほどだ。いつも大混雑。ところがチェリーさんは静脈認証のブースへ、すらすらだそうです(いいね!)。

JRのチケット発券、コンビニでのレジ行列もここに分類される。必需品を買うので無駄な時間をすごしたくない。お腹がすいているランチ時は怒りが先に立つ。支払が遅い客は、「レジの遅い列」でも作ってほしいとさえ思う。

真ん中にはランチの行列。だいたい美味しい店なのでエンタメ性はそこそこ高い。だが行列にそそられて、実は調理や接客力に難があった、という事例も多く、わたしはこれを「悪魔のテクニック」と呼んでいる。

なおパチ(ンコ、スロ)を象限Bに置いたが、プレイの上がりに生活を賭している場合は、そのスポット(台)が欲しいという切実な行列なのである。ゆえにエンタメ度は低い。象限Dに入ることがある。

【タイプによって行列づくり・マネジメントの対処が違う】
A~Dのタイプ別に見て、供給側として行列が好ましいのはA、B、C。好ましくないのはDである。

自明のようであるが、この違いは案外重要である。たとえば行列へのもてなしが効果的なのはAとB、特にBである。Aはもてなさなくても並ぶが、Bはもてなすことで次回にまた並んでもらえる。そして顧客ロイヤルティが高まる。

だがCへはもてなしは効かず、「早くしてほしい!」と懇願される。Dへのもてなしは逆に顧客の怒りを誘発し、顧客不満足度を上げることになる。

Aには「無関心」を装いつつ事故が起きないように気をつける。Bは行列をもてなすことで行列(顧客ロイヤルティ)を育成する。Cはサービス効率性をアップさせて満足度を高める。Dはサービス・マネジメントを抜本的に見直し、標準化も進める。

そもそも行列(させること)は是なのか非なのか? 行列(すること)は満足なのか不満足なのか? 疑問はたくさんあるのである。

今週は行列という不可思議な現象を、やわらかく、ランチ時には自ら並びながら考察してみたいと思います。

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行列マーケティング 2.顧客不満足度を増す行列マネジメント

行列マーケティング2回目は“管理するという間違い”をテーマに。

【整然と並ばない人たち】
ナッツベリーファーム(ロスアンジェルスのテーマパーク)でのことである。ここはディズニーランドよりも体感型の遊戯施設がある遊園地である。ディズニー並みに混雑もすることが多い。気持ちよく濡れるウォーターライドの遊戯施設ではズラリと行列が出来ていた。わたしは子供と行儀良く行列の末尾に付いた。そのウチにもどんどん行列は伸びていった。行列は金属の棒の柵で仕切られていた。列に並んで10分もすればライドができるのだ。

ところがそこで柵を乗り越える奴がいた。どう見てもメキシコ人だった。しかも子供に「くぐれ」と指示をして柵をくぐらせるのである。彼らに向かって「you are cheating!」 と叫んだわたしだが、聞こえなかったフリか、英語がわからないフリをされた(発音は悪かったよスマン)。

人種差別的な発言はいけないが、どうも彼らに「並ぶ」という感性が乏しいという光景にはファストフードや店舗での振舞いで何度も見かけた。お国柄なのだろうと思った。

【整然と並ばない人たちも日本にいる】
先日のPS3の販売時(有楽町ビックカメラ)の行列の説明にこうある。

混乱の原因のひとつには、客のかなり大きな割合を占めた、外国人と店側のコミュニケーションが上手くとれていなかった点がある。店側では十分な数の在庫が確保できている点、落ち着いて整列を行なって欲しいという指示を再三にわたって出していたが、これらのアナウンスが効果的に伝わっていたとは考えにくい。作法の違いからか、我先にと列に割り込む客も多く、これが混乱に拍車をかけた。引用元

ここで言う外国人は中国系の人たちである。わたしの乏しい中国体験からも、彼らにもまた「並ぶ」という意識が低いと思う。行列する民族としない民族があるのは事実である。

日本人は相対的にかなりマナーがいいが、最近目につくのが中年男性のマナーの悪さ。コンビニではフォーク型の行列をしない。歩いていて避けない。歩きタバコをする。おとーさんたちのマナーは悪化している!

【タイプA「パブリシティ行列」の心理変化】
行列をきちんとマネジメントできるかどうかは情報提供力次第である。再びPS3の発売日の状況から。ビックカメラの店員が、歩道から車道にあふれた群集に警告を与え、整理を促している際だった。その店員は2つに分かれた群集から混乱なく列を作るために、店舗裏手と公道側の群集を別々に誘導していこうと意図していた。しかし、その考えが裏目に出てしまった。

メガホンで叫ぶ店員は「ここにいるお客様には十分な数の在庫が確保できている」と前置きした上で、「向こうの(裏手側の)人たちから先に誘導します」とうっかり叫んでしまったのだ。この時点で、列待ちの群集の多くは、1000人近い数にふくれあがった全員に商品が行き届くとは考えていなかった。

引用元

口を滑らせたのはうっかりミスだが、ヘタをすれば暴動であった。そもそも2つに分かれた列をマネジメントしきれなかった店側のミスであり、さらに「何人に何台行き渡るか」「どのように行き渡らせるか」それが「何時からなのか」、臨時に行列マネージャなる人をおいて、情報を繰り返し繰り返し伝えるべきであった。


左はビックカメラ、右はヨドバシカメラ。

これに対してヨドバシ アキバ店では地下4~5階の駐車場に集められて夜を過ごしたお客さんが多かったという。こちらにも中国人や中東人の人もいたが、混乱は無かった。店舗施設(の余裕)や環境の違いとだけとは言えないと思う。

行列という物理コントロールは、並ぶ人の心理コントロール次第なのである。2001年の明石花火大会歩道橋事故でも行列の誘導ができなかったのが主因だった。明確なことばで、情報を伝えきるという基本を忘れてはならない。

【ヘルス・エンジェルスという悲劇】
昔の話で恐縮ですが1969年、通称オルタモントの悲劇と呼ばれるコンサート会場で殺人事件が起きたのだが、それはヘルス・エンジェルスという警備担当に雇われた暴走族によるものだった。 参考サイト

それをもじって「行列エンジェル」なる行列をマネジメントする女性の専門集団をつくって派遣するというのはどうだろうか。女性がいいのは柔らかな対応で暴徒も治まりやすいから。さまざまなイベントで需要があると思うのだが。

【タイプD「怒りの行列」の行列マネジメント】

タイプDはATMやコンビニ、スーパーなどであるが、このタイプの行列マネジメントは標準化、ルールづくりとその運用が必要である。

ところがコンビニエンス・ストアやスーパーでは、店舗什器の配列/配置によってまちまちの運用がなされている。チェーンとして統一されたマニュアルがあるはずだが、それが運用されていないときもある。。XXXチェーンならどこの店舗に行っても同じ設備とサービスを訴求するなら、行列マネジメントの標準化もまた重要なはずである。実際には教育などの問題もあるのでむつかしいだろうが。

ある米国のスーパーでは「three is crowd」というサービスをしていた。レジにお客さんが3人並んだら、閉めているブースを即座に開ける、さらには割引もするという店側のルールである。three is crowdというのはことわざで(2人だと仲間だが3人寄れば分裂する)、ようするに「長い行列をつくらない」というわかりやすい合言葉という、アメリカ的な発想。

パートやアルバイト、派遣さん、さらには外国人(だけ)で運営する日本のサービス業では、こうした米国並みの「わかりやすい合言葉」という標準化が必要になっている。合言葉の良いところは、店側の管理だけでなく、お客様にも「あのお店の行列マネジメント・ポリシーはこれこれである」というイメージを植えつけられるところにある。

日本の銀行のATMでは30人並んでいても「お並びください」と言うばかりである。ATMの外にまで行列が出来ていても放置されている。まさしく「Time is Money」なのに、お客さんのTimeにどう気を配るかポリシーが感じられない。

【顧客は管理する対象ではない】
行列させるのは「ほんとうは申し訳ない」が基本である。行列させて話題づくりは本末転倒である。だが種々の事情でそれが致し方ないときもある。そういう思いからスタートしてほしい。

「行列を管理する」のではなく、「行列に育てられる」と思って仕事をすべきだろう。

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行列マーケティング 3.行列ホスピタリティ: 行列をもてなす。

【PS3:「犯罪現場じゃありません」 ニューヨークの行列】


警官出動。これなら警官も出るって。引用元

写真のクレジットがはまっているのでおもしろい。でもまあアメリカにはPS3のために1週間前から並んでいた群集がいたとは。ごくろうさま。このテント設営もそれぞれでテキトーにやっていたので、隙間ができて、折りしもかなり雨も降ったので、隣のテントシートの傾斜から水がじゃんじゃんかかってきたという話もあった。それに、アメリカは「歩道が広いから泊まれる」という観察もできる。

余談ですが、10年ほど前ですが、カリフォルニア州を車でぐるぐる走ってつくづく思ったは、近所の道路のようなフツーの道路でさえ、真ん中にある中央分離帯が日本なら何軒も家が建ちそうな広さがあります。それを思い出して、行列にさえ、国土の広さ、豊かさの差を感じてしまった。やはり戦争する相手ではなかった。

【人は行列が好きなのか、嫌いなのか】
心理学的にも、人は並んでいるときの時間は長く感じるものだという。こむつかしい理論だと、単調な刺激(ドット刺激という)が長いと余計に長く感じる。たとえば「並んでください~! 通行の邪魔になりますから3列整列にご協力くださ~い!」というような文句をアルバイトに連呼させているが、同じ情報を連呼されると、並んでいる時間を余計に長く感じさせる。

「あと○○分です」「今現在○○人までお渡しができます」「あと○○分かかる予定です」と、嘘はダメだが、許容範囲内の見込みを具体的に伝えさせることで、待ち時間の感覚は柔らぐのである。

順不同であるが、並んだ時間が長く感じるケースを列挙してみた。

嫌なことは長く感じる。
反復行動(ATMのような日常行動)だと長く感じる。
情報が無い(少ない)と長く感じる。
管理者/店舗から無視されると長く感じる。
アンフェアなときは長く感じる。(cheatingですね)

【好きな長い時間もあります】
人は好きな長い時間と嫌いな長い時間がある。それをアインシュタインはこう説明している。

熱いストーブの上に一分間手を載せてみてください。まるで一時間ぐらいに感じられるでしょう。かわいい女の子と一緒に一時間座っていても、それは一分間ぐらいにしか感じられない。それが相対性というものです。

なるほど。わかるなぁ。素敵な女性たちとのランチの時間が短く感じられる理由が。思い出しました!連休狭間の明後日の楽しいランチをセットしなくちゃ。そういうのはセットする時間からして楽しい。

つまり、行列をする前の準備時間さえ、行列を(予定)する人々にはインプットされていて愉しんでいる。特にPS3やWiiのように待ち望んだ商品であればあるほど、すでに心の中では行列をしているのである。

【年齢と待ち時間の反比例の法則】

年齢と待ち時間が反比例する法則についても心理学者のさまざまな見解がありますが、次の記述にはなるほどと思いました。引用させていただきます。

実際にある心理学者の調査によると、時間の感覚は、その人の実際の年齢に反比例するという結果が出ています。こう聞くと小難しいですが、つまり、同じ1日であっても、例えば1歳の人にとってはこれまで生きてきた時間の 365分の1であるのに対して50歳の人にとってはこれまでの人生のたった18250分の1でしかないわけであり、その分短く感じるようになるのは当たり前といえば当たり前のことです。 そう考えると、この世に生まれての第1日目は本当に長かったのでしょうね。
引用元

年取ると時間間隔が薄まる。新しいこと/知らないことに素直に驚くこと、自己(経験)否定すること、美には素直に美しいと口に出すこと、つまりカサカサにならずに日々感動することが大切でしょう。ちと脱線しました。

【行列に優しい店舗になろう!】
さて、ニューヨークのPS3販売前のソニーの状況を伝える写真で、わたしが注目したのは「珈琲」である。

無料の珈琲。

どうやらソニーの店舗が「並ぶのもたいへんでしょう。何もおかまいすることができませんが、せめてコーヒーをどうぞ」と振舞ったらしい。これは低コストで気が利いている。たかがコーヒー、されどコーヒー。雨の降る寒かった夜、そのコーヒーの味は忘れられない。

つまり好きで並んでいる行列なのだからこそ、低コストのちょっとしたもてなしでも心理的に最大の効果を発揮する。思いやりのような小さなサービスでほっとするのである。それがあるだけで、暴徒になるか、店舗クルーと仲間意識に包まれるか、分かれ目になり店舗の評判に影響する。

店長さんは、行列に対して「小さなサービスをしてあげましょう」と店舗クルーに実施させることが大切である。最初はマニュアルないしプログラム化するのでもいいでしょう。できれば、店舗の正社員のみならず派遣さんも「もてなしましょう」と率先して実行するような店舗になれば、素晴らしいと思います。

並ぶ人々はその店舗の取扱商品のコアなファンなので、行列に優しい店舗というイメージは、固定客作りにもなる。積極的にお店のトイレも使わせてあげて、ちゃっかり行列キット(髭剃り、使い捨てタオル、下着、コンタクト液、タオル等々)を販売するものいいでしょう。

【たわいない思いつき=行列をもてなす】
行列をもてなすためにいくつか思いつきを書いて、締まらなくて今日のブログの締めにします。

・大道芸人を呼んで行列をもてなす。(PS3を1台差し上げるギャラでやって来ますって)
・音楽家を呼ぶ(どんな音楽が良いか、考えどころ)
・クイズやビンゴをして、受賞者に特典を与える
・フード屋台を呼ぶ(情報を流すだけ)
・冬ならトン汁を振舞う(トン汁なら食中毒もないでしょ)

大切なことは「行列の目的に関する事実/情報を伝える」「行列していること以外の刺激をする(単調にならないように)」「行列者はコア・ファンであるという認識をパートまで浸透させること」である。

行列のできる飲食店では、行列にひと口ワイン、ひと口ビールを振舞うと、高いランチを注文するンです。Cherryさんやわたしはそうですね(笑)。

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行列マーケティング 4.行列づくりのテクニック: 悪魔のテクニックはお奨めできない

3回にわたり行列について書いてきたが、そもそも「なぜ人は行列するのか」という根源的な問いかけを少し考えてみたい。

【なぜ人は行列するのか】

衝動的な行列への参加の場合、この答えは至極単純である。「人が並んでいるからオレも並ぶ」のである。

「お時間と御用の無い方、ちょいと足を止めてください。どうぞ見ていってください!」に釣られて並ぶ。これはわかりやすいし、行列嫌いなわたしも1 度ぐらいなら経験はある。横並び意識、ベストセラーを購入するフォロワー行動、スケベ心か強欲な心を出してしまって、つい並ぶ。余談だが、近未来通信のあの新聞広告で、嘘を見ぬけないほど欲ぼけになってはまずい。ちょっとインターネットで調べるだけでIP業界の掟(安いものが勝つ=出資損はまぬかれない)はわかりそうなもの。

PS3にせよ、Wiiにせよ、昨年行列ができたいW-ZERO3にせよ、行列には「行列トリガー」が仕組まれている。「行列トリガー」とはわたしの造語であるが、「並ばなきゃ、先を越される」「並ぶことがおもしろそう」「並ばないと手に入らない」など、いわゆるティーザー(じらし)キャンペーンが何らかの情報で仕込まれている状態である。

多いのは供給を絞らざるを得ません、今回の生産はこれ限りです、という在庫不足情報である。少ないとか無いとなると、人は方々を回って探そうとする。インターネットの無い昔であれば、テクテクとこの店、あの店を探すが、電話をかけまくって探す。ネット時代の今では、サーチをしまくる。

こういう陽動作戦も口コミ・ネットコミで伝わり、ナーバス(そわそわ)キャンペーンをユーザーに展開させることをマーケターは画策する。

ちなみにCherryさんたちは千疋屋の月一回しかない、デザート食べ放題(だったか)への予約に電話行列をしているが、なかなか成功していない。これも「月一回」という絞込みがミソであろう。


舞浜イクスピアリ店では、大人気のフルーツ食べ放題をクリスマス企画といたしまして、12月20日に特別開催することとなりました。皆様のご予約お待ち申し上げます。 (ゴメン、もう満席)

千疋屋に毎月電話している女性たちは(かなりいるそうだが)、すでに心に行列がインプットされている。つまり心の中で「行列トランス状態」(大げさですね笑)であり、ナーバス・キャンペーンが効いている。マーケターであれば、こういう心で並ばせる仕掛けこそ編み出したい。さすがは千疋屋です。

余談だが行列でゲットした物品をすぐ「ヤフオク」で横流しにする人々は例外である。彼らは行列マニアではなく、オークションマニアに過ぎない。

【どこまでの情報を出すべきか】

そこで問題になるのが「並ばせるためにどこまでの情報を出すべきか」。これは時と場合とモノによって異なるが、PS3とWiiの場合、どうだったのだろうか。

(2004年)
・2003~2005年度で投じる半導体投資額は5000億円。うち2000億円がプロセッサCELLの製造にあてると発表。
・PS3本体の発売は開発が順調に進めば2005年末~2006年春ごろ
・2005年春ごろに正式発表会を開催(する予定)

(2005年)
・ISSCC2005(2005年2月開催の半導体技術者向け展示会)で、CELLの製造プロセス、トランジスタ数、浮動小数点演算性能、消費電力など詳細を発表。
・5月17日、PS3の概要をプレスリリース。仕様だけではなく、主要なゲーム開発メーカー社長のコメントも掲載している。2006年の春発売予定、とだけ記された。

(2006年)
・3月になりPS3の発売を11月上旬に延期。BD規格のライセンスの遅れが公式理由とした。
・この時点では「月産100万台の生産体制を早期に実現させ、発売日までには100万台以上を用意」としていたが、未だ日本で10万台、米国で40万台だけである。
・5月時点で、11月11日(土)=大安を発売日にし、正式な(価格59,800円)を発表(後に引き下げ)。
・北米欧の発売日は11月17日とした(が欧州は2007年に延期)
・9月6日になり、欧州の発売延期を発表
・9月22日、PS3を49,980円に値下げを発表。HDMI出力端子付きとした。

参考サイト http://ps2.unisord.com/ とても詳しい。

とまあ、じらすことじらすこと。Sonyの生産計画の大幅な遅れが原因とは言え、Sonyはマイクロソフトを狼少年とはもはや言えない。久夛良木社長のSony本社への苦言を呈したこともあった。あのSonyが右往左往したサマを見せられた。PS3の場合、情報開示にはあまり戦略性が感じられなかった。

Wiiの場合はこんなじらしだった。

(2004年)
・6月9日、任天堂経営方針説明会で「レボリューション」開発を発表(後にWiiになる)

(2005年)
・3月10日、GDC (Game Developers Conference) 2005で概要発表
・9月16日、東京ゲームショウ2005の基調講演で、コントローラ公開(本体はまだ隠している)

(2006年)
・4月28日、深夜1時、全世界同時に任天堂公式サイトで正式名称「Wii」が発表された。
・5月11日、任天堂より発売される最新ゲーム機「Wii」向けソフトを開発するメーカーが発表された。
・5月25日、連結決算短針発表の場で、「25,000円以上は考えていない」という回答を出し、具体的な価格や発売日については、後日発表」とした。
・9月14日、任天堂より発売される新型ゲーム機「Wii」の発売日と価格が決定した。発売日は12月2日、価格は25000円。さらに販売の計画についても(全世界合計で)年度内に600万台、年内に400万台を目指したい、としている。

こちらはWikiを参考にした。http://ja.wikipedia.org/wiki/Wii

任天堂は、もともと情報開示には定評がある。Wiiについても、いつどこで何を、どこまで言うべきか、かなり議論をして決めているように推察できる。

PS3にしてもWiiにしても、情報開示は業界のプロ向け、次いでコアファン向け、株主向け、そして一般向けと、時間の経過と共に開示情報内容を順序づけている様子が伺える。ティーザー情報開示とは、ターゲットを口コミ力でセグメントに分け、それぞれの影響力と口コミでの伝達内容を想定した上で行うのである。

「よくわからないが凄い開発が進んでいるらしい」「そのコア部品はこんならしい」「仕様がわかってきた」「競合との情報戦がおもしろい」「価格はだいたい・・・」「販売計画はXXX売る」「正式なネーミング発表」「確定仕様、価格、発売日発表」、そして行列をしていただけるのを待つ。

PS3でまことしやかに言われた「あまりに性能がスゴいのでゲーム開発業者がついてこれない」のは嘘も方便であった。開発コストがかかりすぎるので開発業者が逃げそうになるのを抑えるために、自社の技術力を誇示して一般ユーザーの声という行列(世論)を誘導し、開発業者の尻をたたいたのであった。 Sonyさんもなかなかやるのである。

【悪魔の行列テクニック】
店舗などでは行列をつくるテクニックは、意外なほど簡単である。

作業をゆっくりすればいいのである。調理時間、サーブ時間、レジ時間・・・。デパ地下の焼きたて行列の類は、だいたいこのテクニックが応用されている。焼きたてが美味しいというメッセージ。焼くまでのオーブンや調理を見せる。焼けてきた匂いもする。並ぶ人が現れる。焼けるまでにもうちょっと時間がかかる。行列が長くなる。「焼きたてですよ~♪」。実に単純。

だがわたしがこれを「悪魔のテクニック」と呼ぶのは、美味しくないとすぐにバレる。あくまで本業に自信がなければ逆効果になるからである。並んで失望した客は二度と来なくなる。特に客さばきや包装などが遅いせいもあって行列が長くなるお店は、怒りの行列になる。口コミで店が殺される。

ディスカウントストアなどで駐車場が足りず、ずらっと公道上を駐車待ちの車が並ぶ店舗もある。故意に駐車場が少ない店舗施設設計をしたわけではなくても、「いつも並んでいるから止めよう」という心理も働くので、やがてガラ空きになる。これも悪魔のテクニックである。

さして美味しくなくても、行列している間の対応が丁寧であれば「並んでも気持ちがいい」ので、また並びに来るのである。悪魔に誠実さを売り渡してはならない。本業を離れた行列づくりというテクニックは存在しない。

ふと思い出したのは人形町のたい焼き屋「柳屋」である。尻尾まで餡子が入っていて、かりっとしたたい焼きで有名が、わたしは焼き金具でひとつひとつたい焼きを焼き上げる、おじさんの手さばきに見とれてしまう。あれを見るだけで行列する価値がある。

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行列マーケティング 5.行列の科学: 顧客の心の中に高順位をつくる。

4回にわたり行列あれこれを書いてみると、雨にも負けず、肌寒さにも負けず行列をする人の行列を作らせるテクニックや手順は存在していることがよくわかった。テクニックがあるということは、並ぶ心や行列の長さを法則によって操作することができるという意味である。それは行列を科学することの入口、いや行列に並んだことにもなる。

そこで行列マーケティングの最終回は、「科学する」というテーマで行列あれこれを締めくくりたい。

PS3のためにSonyニューヨークに最初に並んだ人々。

【再び行列ポジショニング】
このブログの第一回(11月20日)に行列ポジショニングを「エンタメ度」と「レア度」で斬ってみた。再び行列ポジショニングをしたい。「科学する」というタテマエ上、数値化までせずともそれに近いことを示す必要もあるので、今度は「行列時間」と「行列キュー対応」にて、各行列要素をポジショニングしてみたい。

この図はヨコ軸が行列時間、長いか短いか、長さを感覚的に示せば、最も長いものをPS3としてみた。日本では24時間、米国では100時間ぐらいだったと思ってほしい。真ん中のDL(ディズニーランド)、パチ(パチンコ、スロットの開店前行列)、小児(小児科医への行列)、だいたい1~2時間としたい。もっとも左の「短い」のは15分~2分ぐらい。

タテ軸の「行列キュー対応」とは、行列をどう解消するか、すなわち受付=一気に解消型もあれば(PS3)、バッチ的に順次解消していくもの(ディズニーのアトラクション、30~50名/1回など)、随時解消していくもの(ひとりずつないし2~5名ずつなどのレジ対応)を示している。

行列を伸ばすのはいいが、どう解消するのか。PS3など話題の商品は行列すること自体がイベントなので、一気に解消する必要がある。一気に解消することがカタルシスがある。バッチでやると緊張感が切れる。

ランチや宝くじ、ATMは、随時に行列解消されることが理想であり、そのため宝くじやATM受付の数をいくつにするかが読みどころ。

問題は小児科医のポジションである。一定に長く、しかも随時にしか解消されない。その随時という時間はだいたい規則的であり(10分程度)、「次の方」となる。同じ時間間隔は、行列をする側にとってもっとも時間を長く感じるとされる、単調かつ一定の刺激なのである。病院の行列には、大道芸人のようなエンターテイメントを盛り込むこともできないため(当たり前か)、行列心理を柔らぐのがもっともむつかしいと思われる。

以下、いくつかの心理学的な視点に触れたい。

【同調行動】

行列するひとつの動機に「同調行動」があるとされる。同調行動とは心理学用語であるが、話題のお店への行列はおおむねこれで説明がつく。

①追従心理
誰それに気にいられたいため、自分の気持ちをまげてでも、誰それに同調する。自分はグルメではないが、グルメの誰それが美味しいといっているなら、そうするという心理。
②同一視する心理
並ぶことで、並ぶ人々やグルメと価値観が似ている、同じようなことをすることで自分と彼らを同一視をする心理である。
③内面化
人に釣られて並んだだけだったけど、本当は自分はこれがしたかったんだ!と自分をだまし、だましが嵩じて本当になるという心理。

上記のポジショニングで示すとDタイプがこれにあたる。

【小耳にはさんだ効果】

「小耳に挟む」、たとえば「あのお店、XXXXがとっても美味しいのよね。美味とはアレよ」という行列している人の言葉が、つい耳に入ってしまって並んでしまうといもの。社会心理学用語で盗み聞き効果(overheard communication effect)というそうだが、行列現場での口コミ行列促進と言っていいだろう。実際に並んでいる人がいて、囁くのである。これはかなり強力。フラ~と行かない方がおかしいのかも知れない。

余談だが、百貨店の「新春 お年玉袋」なる販売の現場では店員が囁いていた。「奥さん、あの袋にはXXXのドレス・ウォッチが入っているんですよ。あの袋だけ、あとひとつだけなんです」。あれは汚い手だと思った。

2006年に創業120周年を迎える伊勢丹新宿店では、1月2日と1 月4日に「新春祭」と称して魅力的なお年玉袋が約47,000点販売になります。なかでもオススメは、1月2日(月)限りで販売になる化粧品<クラランス><ジバンシィ>のお年玉袋。価格:各5,000円 ※数量には限りがありますので、品切れの節はご容赦ください。

だそうです。ネット耳を使って予告して並ばせる。もう始まってます。

【行列時間】

これについてはアインシュタインの言葉を引いて少し触れた。行列をしていることを短く感じさせるためには、五感の刺激、アトラクション(大道芸人など)、差し入れ、匂い、職人の手さばき、など変化を付けることが大切である。何か起きれば気が紛れる。

「待ち行列理論」というものがある。実務では主に情報システムのトランザクションタイムを計ることに使われるもので、小児科医に並んだママが「あとどのくらい並べばいいのだろう」というときに効果を発揮する。

一般的な式や計算方法などはネットで調べてもらいたいが、「窓口の数」「到着時間分布」「サービスの時間分布」など式を変形して仮説を立てることができる。もちろん、待ち時間データがなければ計算できないわけだが。業種やケースによりさまざまな仮説を立てて計算することは大規模店などでは必要となる。

【行列のかたち】

最後に行列にもかたちがあるという指摘をして終わりたい。もっとも皆さんも目にしてきたのは、ディズニーランドの非日常空間の行列である。ディズニーのアトラクションの行列のポイントは「行列が直線でないこと」にある。あのクネクネと折り曲がって進ませる行列のカタチにもアトラクションがある。

クネクネと曲がれば、景色が変わる。屋外のアトラクションだったら、行列する向きが変わることで景色が変わる。あ、あんなアトラクション、楽しそう!さらに他の待っている人の顔が見える。同じ目的で並ぶ人の表情が見えて、相憐れみ意識がもたげる。

物理的かつ時間面の制約はあるが、行列を固定化させないこと、行列のかたちを変えることも、行列時間をもてなす工夫のひとつである。

以上です。お付き合いいただきありがとうございました。

行列マーケティング」への6件のフィードバック

  1. 実は池袋よりも、アキバの方が死人が出るんじゃないかってくらい
    酷かったんですよ。群集心理で数百の人が一斉に入り口まで走り出したのです。
    午後10時前後の認めれてない列でまだマスメディアは来てない時間帯でした。
    池袋は押し問答になっただけなので、まだマシなレベルです。

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