家族医ー心の病がなおっていく道

家族医ー心の病がなおっていく道
 人間と歴史社 2018年6月30日初版 定価1600円(税別)

患者と家族が“なおっていく”七つの物語”
「私にやさしくしてくれる、お母さんに会いたい!」

不登校、引きこもり、パニック、発達障害等の患者たちを
悲嘆する母、支配する母、抱擁する夫、寄り添うペット…
心療内科医 小松信明の精神分析とカウンセリングが
“無意識の自分”を自覚させ、家族に“許しあい”を授ける。

2018年6月20日、全国書店で販売開始。Amazonでも販売中

【『家族医ー心の病がなおっていく道』の紹介】

山形の小さな心療内科医院、小松医院の門をくぐると、心の病がなおっていく道がある。家族が家族のもつ本来の愛の力に気づく、ほんとうの心療内科治療がある。

「なぜあそこに行くとなおるんだろう?」

子供たちの引きこもりや不登校、うつやパニック障害の症状の根本にあるのは、家族とりわけ母親が、子の思いを理解せず、無関心であったり、支配者になること。小松信明医師は母の“毒素”を吸って歩けない子に寄り添い、母の精神分析(患者が無意識下にある真の自己に気づく)やカウンセリング(患者の話を聴いて受け止めて共感を示す)を通じて、「悪かったのは自分だったのか!」という気づきをうながす。母が気づいた時、治療は劇的に進み、母親をとりもどした子は元の笑顔になる

「心の病がなおる」とは「社会に出てなんとか働ける状態」になることである。心の症状が原因と考えられる身体的異常ー発作、パニック、頭痛、円形脱毛、発疹、胃痛•胸痛•腰痛などの異常が完全に治り、精神的に「自立できる」、母をまた父を「許せる」ことである。「なおっていく道」で患者や家族にどのような変化が訪れるのか?

ライター郷は、小松医師の診療を観察し、質問を浴びせ、そして患者に聴きその手記を読み、家族に聴いて「なぜなおるのか、どのように、どこまでなおるのか」をたどった。小松医師と議論を重ねて、治療の意味や医学的な裏付けまで踏み込んだ。診察室の外での治療や家族の心の変化も書いた。「論」や「解説」ではなく「物語」なのは、治療は医療行為がすべてではなく、患者の自助努力もあれば、家族の支えもあり、社会的支援や自然の移り変わりといった環境もあるからである。それらを網羅して描くとき、医師も一人の登場人物になる。サイドストーリーとして、小松医師の恩師たちや先人の業績をひもときながら、精神分析の手法や精神医療をめぐる歴史の一端も学べる。

実在の七つの家族なおっていくまでのプロセスのドキュメント。患者とその家族と医療者が響きあい、家族の愛の力に気づくリアル•ストーリーは“母性の群像劇”でもある。最大の問題は、母親が気づけるか?である。小松医師曰く「母が気づくとなおりは早くなりますが、気づかないと診療にさえ来ません」。お母さん、あなたはどちらですか。

【目次】

はじめに

第1話 “あったかいもの”をとり戻すためにーヒロトさんの症例から
「こんな学校に来るんじゃなかった……」/「学校に行くことではなく、自立することが目的です」/ほんとうの患者は誰なのか?/「お母さん、逃げてる!」/生まれたとき最初に抱きしめてあげなかった/「わたしは“ヒゲ”を生やした母でした/母がヒゲを落とし、子が自由になるとき/あったかいものが心の底を覆うまで

第2話 ペットに話しかけてごらんーマキコさんの症例から
社会から外れた三〇数年/「発達障害」というレッテルをはがして/「花子がやってきた/小松ペットクリニックではないですが/花子との散歩療法で良くなっていった/枝葉を重視した母/発達障害を差別しない社会を

第3話 一緒に歩いていこうーユキさんの症例から
心の病をもつ妻に寄り添っていこう/ユキの生い立ち/灰色の静止した風景においかけられて/母から離れても母の影が/パニック障害じゃないかしら/二つの思い出ーあったかいひざと冷たい椅子/家族の治療方針を伝える/たくさんのユキ/「旦那さんのおかげです」/人格のゆくえ

第4話 母は家族の太陽であってほしいーケイタさんの症例から
痛い、痛いという叫びのもとは……/「大丈夫です、良くなりますよ」/怒ってばかりの父親像に必要なもの/交差点で身動きができなくなった家族/患者家族会で力をもらい、家族に向かう/あせらず、あきらめず、あてにしない/家族が変化するとき/ケイタさんのつらさとやさしさ/お母さんは家族の太陽になって

第5話 子供を信じてー不仲の夫婦の子供たちの症例から
「お母さんに何をされたか、言いなさい!」/再診日ー夫の話から見る妻の姿/患者の正しい力を引き出して一緒に歩く/子供を中心にしてください!/愛の注ぎなおしを始めよう/「真の親」の笑顔をもてるとき

第6話 お母さん、変わってくださいーエリコさんの症例から
「おかしいのはお前たちだ!」/おかしいのは私のほうだ!/お母さんに育て直してもらいましょう/育て直しの“険しい坂道”をのぼる日々/「仕方ないんです」というひと言から……/小松医院を卒業したもの……/ぶり返しがきても、前よりは悪くならない

第7話 必ずなおると信じて、あきらめない、あせらないーアズマさん親子の症例から
始まりは散歩療法/歪んだ道を歩き続けた青春時代/森田療法でなおらず精神分析療法へ/精神分析治療を日本にもたらした先人/自由連想で抑圧された自分を意識化していく/悩みの本体を明らかにしていく精神分析/心の病の「なおる」について/「私の母は日本一のお母さんです」という妻/立派に育てますから、かまわないでほしい!/ノボル、気づかなくてすまなかった/深く心を閉ざしていったノボルさん/自分のことを知る努力をつづける/家族の心の治療の要諦/すべてのものは生きているから変わる

あとがきに代えて

【著者経歴】
小松信明(こまつのぶあき) 小松医院・院長
1936年山形県生まれ。1963年、東京慈恵会医科大学卒業、同大大学院入学。1965年、福島県立医科大学精神科入局、勤務。1970年、山形市に医療法人社団小松医院設立。精神保健指定医、日本臨床内科医会認定医。精神分析医の近藤章久氏より自由連想法を通じて、神経症治療を学び(1日1時間、週3回、5年間)、精神分析家の木田恵子氏にカウンセリング技術を学んだ(1回3時間、週1回、10年間)。2000年頃から心療内科診療に専念し、山形県はもとより他県を含めた多数の患者の治療にあたる。著書に「心の病の診察室」(太陽出版)、「こころを見つめたいあなたへ」(角川学芸出版)がある。趣味は将棋と水泳。

郷好文(ごうよしふみ) 人間と医のライター
1960年東京都生まれ。ヘルスケア分野などのビジネスに携わった後、2006年からwebサイトや月刊誌、医療人材誌等に執筆を始め、2013年より『ドクターズ•マガジン』(メディカル•プリンシプル社)誌で『ドクターの肖像』を連載中。これまで60名以上の著名な臨床医、医学研究者の生きざまを「彫るように」書き、医療関係者のみならず、患者や医師志望の学生にも好評。人間と医療•医学をめぐるリアルな“熱いノンフィクション”を書くことに生涯を捧げている。サビ猫と愉快に暮らす。

【最後に〜母と子の狭い二遊間を抜ける本になってほしい】

小松医師と郷が初めて会ったのは2015年の秋でした。それから本書ができるまでには、2年半以上の月日がかかった。その期間は、今振り返れば、小松先生と郷が心と心をぶつけ合い、通じ合うまでの月日だったように思う。

というのも、初期の企画や草稿では「無理だと思ったのです」と、小松医師が後に述懐するように「ヘボだった」からだ。こうして世に出せるのは、初稿の拙文になぜか「光を見出した」佐々木久夫氏(人間と歴史社代表取締役)の「遠いものを見通す」眼力ゆえである。佐々木氏の助言をきっかけに、小松医師とライター郷の間の「壁」が崩れ、心の医療をありようを「容赦無く」描く心がまえが生まれた。協力を惜しまなかった患者さんとその母、そのご家族がおり、小松医院の患者家族会の方々(とりわけリーダーのTさん)がいた。

出版事情の悪い昨今なので決して豪快な本塁打を求めることはできないが、狭い二遊間をしぶとく抜けるヒットのように、空隙ができた母と子の間を本書が埋めることを祈願して。(2018年6月6日記)

『書物と聖母』Alessandro di Mariano Filipepi(ボッティチェリ )

本書より、抜き書き*************************************

「父親がいなかったり、しっかりした父性がないと、母親にヒゲが生えてくるといいます。それがあなたにも受け継がれていたんですね。母親が自分の“母親愛“のほんとうの姿に気づいて、子供にすまなかったとあやまることができれば、母も子も、穏やかな顔つきに変わってくるものです」第1話

ヒロト「そうだよ、お母さん逃げてる! 言えなかったんじゃなくて、お母さんが言わせなかったんだ!」第1話

自閉症を中心とする広汎性発達障害に関する研究は、科学史に特記すべき迷走の歴史をもつ」浜松医大の杉山教授の言葉、第2話

「犬にいうこときかせようとしたってききません。道でおすわりして動かなくなったら話しかけてみてください」『家族医 心の病がなおっていく道』第2話より。

「強引にいうことをきかせようとしないで、花子ちゃんの様子を見ながら、良い関係がつくれるように自然に語りかけてください。『ああしろ、こうしろ』と無理強いするのがいちばんいけません」『家族医 心の病がなおっていく道』第2話より。

興味深いことには、交代人格は出現することを禁止されると隠れるというのだ。消えたわけではなく、隠れるだけであり、患者は解離症状を抱えたまま一生を送ると考えられている。『家族医 心の病がなおっていく道』第3話より。

広告