「赤松小三郎ともう一つの明治維新」という本をめくっている。赤松氏は幕末の兵学者兼政治思想家である。信州の下級武士の家に生まれ、勝海舟の従者となり兵学を学び、東郷平八郎ら明治の多くの軍人を育てた。その一方、徳川政権に建白書を提出したり、西郷隆盛に内戦をやめよと説得もした。36歳の頃、京都で暗殺された。下手人は西郷の手下と言われている。
本書のポイントは、赤松氏が幕府に建白した憲法草案である。その内容は坂本龍馬の船中八策をしのぎ、加藤弘之(初代東大総長)らの立憲思想よりもずっと民主主義が徹底していたという。
当時のほとんどの憲法論者が貴族院や薩長政権を樹立しようとしていたのに対して、赤松氏は、自身が小市民の出自であることもあって、完全に平等な普通選挙を構想していた。著者の関良基氏は、赤松の思想が憲法に反映されていれば、現代日本がいまだに自民党一党独裁で、明治の思想を引き継ぐ官僚制度にここまで蹂躙されていなかっただろうと嘆く。
だが私が本書から学んだのは憲法や兵法ではない。トランスジェンダーはヤワな平和人なので、戦争や憲法といった堅いものとは縁がうすい。そのかわりに本書は執筆姿勢を授けてくれた。
1、専門家でなくても特定のテーマが書ける。
関氏は明治維新の専門家ではなく、農業や社会資本の教授である。非専門だから学会や常識にとらわれず自由に論じることができた。
2、テーマは地方にある。
赤松氏は著者の故郷上田市の人で、上田では真の憲法論者として知られてきたという。中央には手垢がついたテーマしかなく、地方に独自のテーマがある。
3、Big issueを書け。
本書の結論は「明治維新史は虚偽である」。なぜ虚偽の歴史をつくって市民に浸透させてきたか?それが統治しやすいからだ。虚偽かどうかはともかく、なるべく大きな問題点を書けというのが教訓である。
がんばります。
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