先月、知人の歌のコンサートに行った。2人きりの出演で独唱ありデュエットありの素晴らしいコンサートだった。プロ並みですから。会場は50人ほどのキャパで、満員だった。私は前から2列目で観ていた。その出演者二人が、数日前に反省会をしたそうだ。その時、片方の人がこう言ったという。
「前の方にモデルみたいな人がいたね」
私のことである。もちろん超お世辞である。私が女にしては背が高く、細身だからだけだ。さらにその人がこう言ったそうだ。
「でも、ひょっとして男…?」
あはん…リードされた(Readとはトランスジェンダーの世界で見破られること)。悔しくて、通院しているジェンダークリニックでそのことを看護師さんに伝えた。いつも注射してくださる綺麗な人である。
私「褒められたんだけどそのあとショックなこと言われて…」
看護師さん「なんですか」
私「かくかくしかじか、余計なこと言うのよ、かくかくしかじか」
看護師さん「女性ってね、綺麗なひとに嫉妬するのよ」
私「また超お世辞言って!」
ちょっと待って。女性……って、なんでそういうの?
私「あ…あなた、ひょっとして…?」
看護師さん「ええ、私は男性でトランスジェンダー」
私は狭い診察室で、ぎょええええ!でっかい声を出してしまった。あなた、女性だったの?10回も会って一筋の疑念すら抱かなかった。だって女性度100%じゃない。それからしばし話をしたあと、クリニックに貼ってあった「トランスジェンダーミス日本大会」のポスターを指さして私は言った。
私「こんな綺麗な人になりたい…」
看護師さん「実はこれ、私です…」
またぎょええええ!と声を張り上げてしまった。医院なのにすみません。彼女はこの大会ファイナリストで、ミス日本になればタイで開催される世界大会に行けるという。応援を約束してクリニックを後にした。
昨日から、とてつもなく肩こり頭痛眼痛がひどい。医師原稿に力を入れ過ぎているせいだ。その痛みもしばし忘れるほどの驚きであった。私が余生でしたいことは、良い文を書くことと少しでも美しくなることだ。その誓いを新たにした今日の出来事であった。
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