自立について

よく親から「自立しなさい」と言われたが、自立はした方がいいのだろうか?どういう自立ならいいのだろうか?

自立しなさいと言われるのは、ひとは自立しなければならないからだろう。若者は親に反抗し、学生は教師からの自立を目指し、社会人となって会社勤めを嫌って独立しようとする。自立しきれなかった親や社会人は、子や若者に願いを託すのかもしれない。

自立に関して鋭い論を読んだ。中村尚司氏は自立にまつわる話を『参加型開発』の中でこう書いている。

あらゆる人間にとって自立した暮らしは、絶対にといってもよいほど不可能である。不可能にもかかわらず、人間は生老病死のあらゆる場面で、性懲りもなく自立をめざす。(『参加型開発』2002年 日本評論社 P217)

人は社会で生かされる生き物であり、だれもがたくさんの支援を受けて生きている。それでもあらゆる人が「性懲りもなく」自立を求める。ひとはふしぎちゃんである。その自立に中村氏は二つの方向があるという。

第1は、自分のことはすべて自分で決めて、自分で実行したいという方向である。他者に依存することなく、自分に必要なことは、どんなことでも自分で実行する。(同書P218)

起業や自営業は仕事や収入面の自立、大学の自治や地方分権は社会のなかの自立。なにがあっても自己完結したいーそれは「孤立への道」である。少し考えるだけで問題もある。

たとえば「産まない権利」というものがある。子供を作らない、産まないのはまだしも、出生前の胎児診断で先天性障害を持つ子を生まないというのはどうか。ひとはこの世に生まれてくる権利がないのかということになる。あるいは「民族の独立の権利」は当然だが、その民族とはどこからどこまでの範囲なのか?大陸での民族の線引きはむつかしい。また「発展途上国の自立」はどうか。そこでいう自立は先進国による国際協力という名の経済的搾取の結果であったりする。

自立とは、ひたすら孤立を求めることではない。そこで中村氏は第2の方向性が重要だという。

人間はだれでも、人と人との間に生きる。人間と人間の相互依存関係、人びとをめぐる社会的な諸関係こそ、ヒトを人間たらしめている根本だ、と考える自立の方向である。(P220)

自立とは孤立ではなく、相互依存であるという。そこで中村氏が挙げる事例が興味深い。『口からうんちが出るように手術してください』という本を書いた小島さんは先天性脳性小児麻痺で、手足が機能せず、24時間介護を必要とするひとだ。施設で過ごしながらも「なんとか自立したい」と彼女は願う。普通校に家族や教員や級友の支援を受けて通学する。高校へ予備校へそして大学に入学。電動の車椅子で移動して、恋もした。デート中も自分で排泄できるように、口から排泄したいと思った。失恋もした。それでもなんとか一人で暮らしたい。

小島さんはこれまでも、これからも、たくさんのひとの介助の上で自立して生きていく。それが自立である、人間にとって自立とは依存の深まりなのである、と中村氏はいう。ものすごい視点である。

社会は(地球はと言ってもいい)ひとびとが生きながらえるように「循環」がある。気候の循環も、生産や消費活動の循環も、ひととひとの出会いの循環もある。その循環はひとびとの活動=「相互ネットワーク」で成立している。そのひとびととは私たちのことだが、私たちはかなり「多様」なのである。多様だから補いあわなければならない。多様だから依存しあえるとも言える。

そのひとり一人は「皆依存が必要な障害者である」ということもできる。私たちは大なり小なり心身になにか不調をかかえている。心の病気もあれば、慢性病もある。それらが大きな問題でないから「健常者」というマジョリティにいるだけだ。あらゆるマイノリティ、たとえば障害者も、外国人も、LGBTQも、みな隣人なのである。

最後に、マイノリティであることは苦しいことではない。つねにほんとうの自分を良く見ている。自分がだれであるかわかっている。マイノリティであることを自覚することは、真の意味での自己解放であり、自分らしい生き方の発見である。それこそ真の自立である。清々しく生きれるパスポートである。

タネから育てた辛子、ついになってきました!


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