正反対があると知る。

ひとりぼっちの冷たさから抜け出す方法を、ひとりぼっちの先達が教えてくれた。

The Zeroes — taught us — Phosphorous —
We learned to like the Fire
By playing Glaciers — when a Boy —
And Tinder — guessed — by power
Of Opposite — to balance Odd —
If White — a Red must be!
Paralysis — our Primer dumb —
Unto Vitality!
(エミリ•ディキンスン J689)

ゼロとは何か?Phosphorus=元素リンとは何を意味しているのか?アメリカの詩人、エミリ•ディキンスンのこの難解な詩をどう理解するか、ヘレン•ベンドラー女史の解説に助けを求めた。この詩の解説の最初のくだりを訳してみよう。

「冷たさは熱を教えてくれた。小さい頃から冷たい氷を手にしていれば火が好きになる。冷気に囲まれることで火口(ほぐち)のありかを探し当てられるようになった。どんなものでも正反対の力がはたらいている」と。言いかえれば、私たちは欠乏があるから欲望を知る。不足をどうにかしたいから欲望をもつ。正反対があると知るゆえに、何か燃えやすいものの存在を推し量った。ひんやりして火を灯せない我々にも火口はある。(Helen Vendler『DICKINSON』P101)

エミリ•ディキンソンは、小さな村アマーストでひきこもりを続けた。わが人生は冷たいものだと思い続けてきた。一軒家の奥で冷たさとどうつきあっていくか、考えつづけたエミリは、ついに解を得た。ものごとにはすべて光と影、表と裏、背景と前景がある。すべて反対があると知った。

明るさは暗闇の存在ゆえに明るい。自己の影が月にかかり、太陽に月がかかり、エクリプスができる。静止した黒い影のまわりには、燃えさかる激情の炎が見える。自分が黒く見えてもその背には炎があるのだ。氷に触れ続けると火傷する。冷たさに負けるのか?氷に包まれて死ぬのか?それとも氷を溶かすのか?

自分は閉じ込められているゆえに熱くなれるのだ。奥にある欲望を出せばいいのだ。詩を訳してみよう。

ゼロ度で燃えるリンを知り
われらは炎を好むようになった
少年時代に氷河を遊び
そこに火口を探しあて
冷たきに熱きがあると知った
白があれば赤がある!
麻痺ー無反応なわれらよ
生命力を解き放て!
(ことばのデザイナー訳)

この詩は、自分の人生が冷たいものだと思い続けてきた人に、じつは冷たさのなかには熱さがあると告げている。冷たさに閉じ込められた、そのひとの生命力をだすことだ。どうやって?

もちろん「創造すること」によって。

落ちる日があるから上がる日がある。この冷たい世界で暮らし続けることは、冷たさのなかに小さな炎を見出し、熱き力で溶かすことである。

辛子の芽がでました。


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