前にいた、あの所までもどろう。

レノンがギターを叩いてリフをつくる。リンゴはスティックを投げる。ハリソンはぴったりとしたストライブ•スーツを着ている。ポールは歌いだすとすぐに「待て」と演奏を中断させた。「もっと速く」と注文をつけた。レノンの手はさらに速く動き、ポールの声がかぶる。

Get back, get back,
Get back to where you once belonged.

今夏に世界同時公開されるビートルズの映画『Get Back』には、1969年1月に録音された曲Get Backのシーンがある。56時間の未公開テープを編集して作られるドキュメンタリーは、コロナ禍のせいで公開が延期された。12月に公開された先行特別映像では、ジョン•レノンが実に生き生きとしている。彼はこんなに明るい顔をもっていたのか?他のメンツもいかにも楽しそうだ。

Get backの頃はすでにビートルズは解散間近で、仲間割れ状態と言われていたが、そんな感じではない。それを隠して、カメラを意識しているのかわからない。だがNZの編集室にこもる監督のピーター•ジャクソンは、彼らの明るさを見てほしいという。ポール•マッカートニーは歌う。

「前にいた、あの所までもどろう」

それはビートルズが巨大に商業化していなかったあの頃のステージなのかもしれない。だが誰もが元にはもどれない。成長したか退化したか、いずれにしろ誰もがあの所から離れてしまうのだ。

ではなにができるのか?

もどることはできないが、つなぐことはできる。前に自分がいたあの点と、今いる点をつなぐ。すると何がしたかったのか、何が今できるのか、見えてくる。さらに近未来に到達したい点をつなぐ。すると、今それをする理由や、やるための努力が見えてくる。それを使命と感じられるかもしれない。それが生きるということ。生きるとは点と点を常につないでいく作業なのである。

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