19世紀は外科手術の夜明けだ。1850年代まで阿鼻叫喚の「無残な外科」の時代。手術台に乗ることはほぼ死と言われた。だが後半の1900年までに、麻酔法発明による無痛手術、消毒法開発による死亡率低下、その裏付けの細菌の発見があって「死なせない外科」時代となった。
ドイツ人作家ユルゲン•トールワルドの筆致はもの凄い。当時の医者を語り部に登場させ、読者に「目撃者」の視点を与えた。手術の描写にゾクゾクする。とりわけ怖いのが尿路結石を採る体験。麻酔の無い時代、鉗子のような金属棒を突っ込んで取るというのだ。下腹部が引き締まった。
スコットランドの外科医リストンの強みは手術スピードだった。麻酔が無い時代、「速い手術」は「痛みも短い」ので需要があったのだ。彼は初期の「エーテル麻酔による外科手術」にも挑戦した。メスを持つ手を挙げて、お得意のセリフをきめた。
さあ、皆さん時間を測ってくださいー
と言うと、見学者に懐中時計で時間を計らせた。そして麻酔をかけた患者の足を「28秒」で切断。患者は無痛であった。成功だ。だがリストンは一度の手術で患者と助手と見学者を3人殺したこともあった。この時代に生まれなくてよかったとしみじみ思った。
19世紀の犠牲と研究と勇気が、20世紀の外科の時代を招来した。医学とは基盤になる技術や方法が開発されて進歩するものだ。振り返れば20世紀は遺伝子の時代だった。遺伝子の仕組みやメカニズムの探究から、再生医療やテーラーメイド医療などが始まった。21世紀は治療が根本から変わるのだろう。
どう変わるか?たとえば入院はカプセルに入る。カプセルに3日入れば骨折は治癒、2日でステージ4のがんは消失、1日で臓器移植は終り、iPS細胞注入は半日、脂肪吸引は2時間…となるかわからないが、ともかくドイツにはもの凄い作家がいた。本書は我が医療文の執筆上、バイブルとしたい。
まだ脂肪吸引カプセルはこの世にないので、私は脂肪を筋肉化するセルフプロジェクトを実行中。12月中旬から1ヶ月の成果を公開。コロナつらいつらい言うよりも、筋肉増強すべし(^^)さてどこまでいけるだろうか。
コメントを残す