刑務所の真の刑罰とは

刑務所には時計がない』(玉城英彦著 人間と歴史社 2018年)読了。北海道大学名誉教授が日本の刑務所の塀の中が、実際にはどんなものなのか?どんな「自由を制限された」日々を送っているのか?罰とは何なのか?そもそも罪はどう形成されるのか?北大の学生たちのゼミ活動を通して、人間の罪と罰をえぐりだしていく探求書である。

ゼミの活動で学生たちは札幌にある「こざっぱりとした刑務所」に訪れ、緊張の面持ちで視察し、刑務官の話を聴き、そして犯罪者と目を合わす。その体験は学生たちの固定観念を揺さぶり、偏見を解き放ち、自己変容をうながしていく。

感じたポイントは2つある。第1点は学生たちのグループワークの構成である。ゼミの学生21人は4グループに分かれて、次のテーマを議論した。

1、刑務所の生活水準
2、再犯防止(理論)
3、再犯防止実践(窃盗症への治療法)
4、刑罰を考える

1は現実を知る「視察」である。視察をすると刑務所が予想外に「恵まれている」ことに気づいた。汚くもなく怒号もない。では刑務所とは何をする場なのか?というそもそも論に立ち返り、「再犯防止」であると気づいていく。ある建設会社は再犯者を雇い更生させる。ある先進国では刑務所は「社会復帰訓練の場」だとしている。日本の犯罪者の大半が禁止薬物と窃盗であることから、再犯は「心の治療」という側面もある。

そこで第2点の贖罪につながる。最後の第8章でとりあげられる昭和の連続殺人犯、永山則夫が過酷な生育環境におかれて犯罪に走る経緯が描かれる。彼の贖罪の言葉が引用される。彼は刑務所で自己の内面を投射し、文に書くことで罪を贖おうとしたのだ。監獄とは死刑とは正しい罰なのだろうか。「刑罰とは何か」という根源に立ち返り、社会の現実の冷たさにぶち当たる。

本書の流れが「視察>理論>実践>社会改革」となっているところに、筆者の教育者としての大きな器も感じた。

寒くなりました。


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