『捨てられる食べものたち』が教えてくれること

食品ロスとは「食べられるのに捨てられてしまうもの」で、英語のFood Lossは「生産•流通•加工の過程で発生した食品の廃棄」を指すそうだ。同じことばなのにどうして違うかといえば、食文化はそれぞれの国や地域で異なるからだ。

食品ロス問題ジャーナリスト井出留美さんの著書『捨てられる食べものたち』には、だから「食品ロス問題がわかる本」という副題がついている。とはいえ、1章から4章まで46の項目では、食品ロスだけでなく、Food Lossに関係することも含まれる。食品は食べる前も後も長いプロセスがあるからだ。

ほぉーっと思ったのは、「ハンバーガー1個をつくるために、お風呂15杯分の水が必要」というくだり。材料のパン、牛肉、レタス、トマトを作るために費やされる水は、3000リットルにもなるという。実際の水だけではなく、小麦や野菜の栽培や収穫、牛の育成、その物流、調理やサービス…そういう活動をすべて水に換算するとその量になる。そんなに水のめんわー。お米1キロでも3000リットル、牛肉1キロにいたっては20000リットルの水がいると知ると、食べ残すことはできん。

ところが日本は「東京都民一年分の食料を捨てる国」で、毎日ひとりがおにぎり1個分相当を捨てている。それはほんとうにやばい。3.11の東日本大震災のとき、おにぎりを握って配った人がいた。飛行機で運んで会社もあった。あんなにありがたかったのに、その分捨てているとは。

どうしたら食品ロスはなくせるのか?その答えは本書にあり、ヒントもある。問題を大項目であげてみよう。

•日本の食料事情の問題
•貧困と過食の問題
•農業用地や農業従事者の問題
•食品廃棄やゴミ処理の問題
•賞味期限や消費期限の問題
•食品リサイクルやフードバンク活動
•料理や野菜を育てる話

コンパクトにポイントをおさえてあるので、親子で「食品ロスの全体像を学ぶ」にはもってこいだ。自分の家で、何を、どのくらい、なぜ捨てているのか、今度の夏休みに調査研究するといい。研究だけでなく、しっかり栄養もとろう。

研究するなら、ひとつ大事なことがある。それは「全体像を学ぶ」ことだ。ある一部ではなく全体を見る。これは食品問題や環境問題を解決するとき、たいせつな視点だ。

環境問題でいえば、最近始まった「レジ袋有料化」がある。それもたいせつだが、家のゴミ箱を見ると、レジ袋よりも食品の包装ゴミがいっぱいあるのに気づかされる。レジ袋だけなくせばいいのか?という疑問をもつだろう。

また十代の環境活動家のグレタ•トゥンベリさんの活動も思いだすだろう。彼女は「環境破壊する会社は敵」「環境問題をテーマにしない政治家は悪い」「環境保護を優先しないひとは敵」とまっすぐにいう。こわーい(^^)それも必要なことだと思うが、環境問題も食品ロス問題も、だれかを敵にするだけでは解決しないとも思う。次のリストをみてみよう。

•販売活動を優先するか、食品廃棄をやめるか
•利便性をとるか、環境保護をとるか
•環境コストをあげて、販売価格は高くていいのか
•ゴミの分別と収集と処理の現実と理想はなにか
•象徴的な活動(レジ袋はノー!)と、現実的な活動(プラ包装の縮減)のどちらをやるべきなのか

ここにあるのは、「バランスをとる」「トレードオフ(どちらかをとるとどちらかが失われる)」「ポイントをおさえる」という考えかたである。なぜそうなるのかといえば、経済成長をとるのか、成長を拒否するのか?がまんするべきか、もっと求めるのか?敵は味方になり、味方は敵になる。答えはかんたんに出せない。生産や消費は人類全体の問題だからだ。さまざまなことを総合的に判断して、行動や実践にうつしていくことが必要である。

食品ロスとどうかかわるかを考えることは、どう生きるか考えることにつながる。本書は小学生高学年から読めるが、その時期にこうした大きな視点をもてる読書をすることは、非常に有益である。

捨てられる食べものたち 食品ロス問題がわかる本』井出留美著 2020年7月 旬報社)


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