活版で名刺を彫ってもらいました。

名刺の制作をお願いした市倉郁倫さんからのお便りに、こうあった。

人と会うことが少なっても全くなくなるわけではなく、かえって会うことは貴重な機会として認識され、名刺はただ配るものということからもっと重要な意味を持つようになるのではと思っています。

アフターコロナ時代は、社会やくらし、ひととひとの関係に変化をもたらそうとしている。ウイルスのせいで、距離をあけたり、アクリル板で隔てたり、ビニールや不織布ごしだったり、ヴァーチャルな集いをしたりと、ひととひとを離すもの、遮るものがいっぱいできた。

そのせいで孤独を深めるひともいれば、煩わしい人間関係から解放されたというひともいるし、数週間後の生計の心配はともかく、仕事に終われないくらしの爽快さを讃えるひともいる。離れてもできることは離れてやればいい。不合理よりは合理なほうがいい。混雑や近すぎる人間関係のせいでおかしくなったひともいっぱいいるのだから。

しかし、活版印刷機で一枚一枚印刷をするBird Designの市倉さんがいうように、ひとと会うことはかつてより貴重な瞬間になりそうだ。今まで以上に大切だと思える。ひとと会うとき、きちんと服を着て、こざっぱりした髪で、笑みを浮かべながら、クォリティの高い名刺を渡す。それが貴い瞬間になる。

ぼくが名刺を新調しようとしたのは、コロナ時代に負けるものか、このまま消えてなるものか、と思ったときに、何か新しくしたいと考えて、名刺が浮かんだからだ。かつて印刷会社の軒先で働かせてもらっているときは、ぜいたくな分厚いファインペーパー(プライク)で名刺を作ってもらった。その後は自作をしていた。また卓上テキンでひらがなで作ってもらったこともあるし、かつて活版印刷の記事を書いたことも二度三度ある。テキンを使ってワークショップもした。だからこのコロナ時代が到来したとき、これは力を振り絞らないとあかん、活版だと思ったのだ。

ネットで活版名刺を制作するところを探して、テイストと費用がマッチしたのがBird Designさんだった。静かに語りかけてくる名刺づくり。文字の深彫りがいい。ハイデルベルクの美しいテキンである。紙の種類も幾つもある。東京都あきる野市の自然がいっぱいあるところで作っているらしい。これだ、と思った。

発注時にぼくがPhotoshopでの原稿づくりでドジったのを、何度もやさしく、解像度は1200dpiに上げてください、4ステップの保存手順はこうです、わからなければラスタライズ前の原稿を送ってください、とまでおっしゃってくださって、それでもドジるぼくを忍耐強く待ってくださり、ついに入稿ができた(^^)こんなことならPhotoshopのことを元相棒のcherryさんにもっと学んでおけばよかった。念のため、基本はイラレ入稿です。テンプレートもあり、有料でデザインもしてくれる。もっと知りたい方はこちらの記事を。

仕上がりは素晴らしい!スノーブル-FS 308kgへの文字の彫りが美しい。ぼく本人の何十倍も美しい(笑)この名刺にふさわしいクォリティの文を書かねばと思うと緊張する。

この名刺にあわせて、名刺入れを手作りすることにした。

こんにゃく糊を塗布した強い和紙を、チョキチョキ切って筒状にして、中表を返して、両側から折り込んでおしまいというシンプルなもの。折り込んだ角を一箇所ずつ“エクボ留め”したのがアピールポイント。

右肩には甲骨文字で「」をおいた。ことばの元の漢字である。

この名刺のおかげか、先日読んだアランの「幸福論」のおかげか、その他もろもろのことのおかげか、自分が扱いにくい人間であることがわかった。ぼくは大きな勘違いをしていた。相手にどれだけ負担をかけていたか、一瞬のうちにわかった。これからはもっとひとのこころの中へ入っていけそうだ。ひととひとを遮るあらゆるものを文で溶かしたい。こころとこころを重ねてやりたい。残された人生、いい意味で好き放題やりたい。

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活版で名刺を彫ってもらいました。” への3件のフィードバック

追加

  1. 岩崎俊一さんのお中元のコピーで、

    「会う、贅沢」

    というものがあったのですが、
    これからは一人一人がそのことを、
    実感するようになりますよね。

    これからは名刺が無くなる‥‥なんて味気ない。
    それと逆行して、
    とびっきり素敵な名刺を作られましたね。
    郷さんの決意を感じる、
    すごくパワーを感じる一枚ですね。
    甲骨文字のロゴがまた粋です。

    なんだか幸先が良い予感がします。
    郷さんのアフターコロナ時代♫

  2. mimoさま
    どうもありがとうございます。
    「会う、贅沢」…愛する人に会うのは贅沢だと思って会わないといけません。
    慣れておろそかにすると離縁のはじまりです(笑)
    最初は非常に古風なフォント、秀英体のようなものを考えていましたが、
    このデザイナーさんがそれよりはスッキリな感じなので(笑)
    古い文字は甲骨文字だけにしました。
    1枚あたりマスクよりぜんぜん高いですが、マスクは人を排除するほう、
    名刺は人をウエルカムするほう、どちらがいいですか?ですね。
    mimoさんも良い歌を、いっぱい歌って下さい。
    そろそろ舞台活動もロードマップが発表です。

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