正直いうと弱音を吐いている。夜は眠りも浅いし、夢では追いつめられる。日中作業がはかどらず眠たくなる。すべてコロナのせいだ。コロナうつにおそわれている……
自宅作業がふさぎのもとではない。ずっと前からだし、邪魔するのは猫しかない。近未来が見通せないこと、そこから派生する数えきれないネガティヴな思いが、自分を苦しめている。
ネットを見るとつらいニュースばかり。感染者数や死亡者数。非難や批判、自己主張も渦巻いている。意見をすると心のバランスを崩す。そもそも人は意見では変わらない。ネットを閉じて、自粛せずに繁華街や行楽に出かける人も多いようだが、ぼくはウォーキング兼買い物兼猫の散歩に出るくらい。歩くと気分はいい。街角や窓辺の猫にもいっぱい会える。買い物はうっぷんばらしになるか。iPhoneSEをポチりそうになったが、いつまで生きるかわからない身の上、今はやめておいた。
うつをぶっ飛ばす特効薬はないのか。ふとツィッターを眺めていると、今、ローリング•ストーンズがやっている、という。

4人がそれぞれの家から、You can’t always get what you want!とハモっているじゃない。ミックはミックらしくギターを持って叫ぶ。キースはソファでつまびく。酒やめたんだよね?ロニーは飛び跳ねている。一番若いとはいえいくつだっけ?チャーリーがシュールだ。ソファやカメラバッグをドラムにしてニコニコしている。コロナ禍の救済イベントである。元気を得て、ストーンズの『Flashpoint』を回して聴いた(CDだよ)。
そして、アランの「幸福論」をめくった。最初の挿話は「名馬ブケファルス」だ。名馬が怯えているものは自分の影であった、という話だ。勇敢な将軍も恐怖に怯えると、暗がりで立像を見ただけで幽霊だ!と大股で逃げ出す。それが人間なのだ。人の怖がりやイライラは、具体的な原因があると哲学者アランはいう。泣き喚く赤ん坊を揺すってもなだめてもムダ、産衣のピンがチクチクして痛いのだと。つまり、何かちいさなピンが影響しているだけだ。そこで閃いた。
ぼくにはピンが足りない!
ピンは災いとは限らない。それは刺激だ。ストーンズはピンなのだ。チクっと刺して、ほら飛び跳ねろ!というエネルギーをくれる。むしろピンの上で踊れ、というのがストーンズの音楽の真髄である。だから彼らは痩せているし、高齢でも病気になってもまだやれている。
しょせん人生とはピンの道を歩くようなものだ。チクチクだって?上等じゃないか。ピンとおれのどっちが勝つか、楽しんでやろう。
ありがとう、ストーンズ。ありがとう、音楽。今日は立ち上がれた。
私も立ち上がれなかった時、
母に薦められたアランの「幸福論」で前を向けました。
この本は「読むお薬」でした。
今でもつまづくと、この本をめくり直します。
そうですか!よかったです!
実は読み始めたばかりです。ファウストと平行して読み進めてみます。くれぐれもお気をつけてくださいね!