流行病の数式

危機に瀕した時こそ冷静にならねばならない。もしも首都圏に住んでいるなら、コロナウイルス感染症対策として市民ができるのは、東京都知事の言うように不要不急の行動をせずにいるしかない。そうすれば自然に収まるのだから。

僕は根っからの天邪鬼なので、日本はそろそろ収まるなー、欧米は下降まで3-4週間かかるだろうなー、しかし次は南半球に流行がうつり、たいへんなことになる、来冬もまたやってくるなーと思っている。既存の薬が効けばありがたいし、来冬までにひとつ新薬ができるかできないか、ワクチンはむつかしいだろうと思っているが、当たるかどうはわからない。

問題はいかに感染が流行するか?である。

手元にある本でそれを勉強した。『No Time to Lose エボラとエイズと国際政治』、エボラウイルスの発見者で研究者、HIVウイルス感染対策の専門家であるピーター•ピオットの著書である。本書には「流行病の生死、つまり始まってから終息に至るまでの過程を示す、簡潔ではあるが、極めて重要な数式がある」とある。

R゜=βcD

β=感染性(感染確率、ウイルスがどれほど感染しやすいか、感染している人としていない人が接触した場合の感染の可能性)
c=接触頻度(感染する人が1日平均で接触する人の数)
D=感染期間(感染が成立しうる全体の日数)
R゜=基本再生産率。R゜が1以下であれば流行病の発生は先細りする。1であればその地方の風土病になる。1以上であれば本格的な流行となる。

エボラ出血熱の流行時に、ピオットらはザイールの21の村に訪れた。148件のエボラ死亡例が確認され、12人から抗体が見つかった。つまり12人の生存者がいた(死亡率は92.5%=136件)。死に至る期間は感染から14日以内だった。ピオットらの見解は次のとおり。

β=病原性は私たちにとって不利であったが、D、つまり致死率が高く死に至る期間が短いというのは、疫学的見地からすれば、逆説的だが有利な条件だと思えた。急速に死に至るので、感染した人から他の人に感染する状態が長期間続くわけじゃないからだ。もちろん、c、つまり発症者と接触して感染する機会を減らすことも必要である。(本書P68)

ここではまずHIVウイルスで考えてみよう。HIVの感染確率は1%以下なので0.01、感染期間を14とすれば、接触頻度が7(人)であればだいたい「1」となる。接触とはこの場合、避妊具をつけない性行為やお産などとなるのだろう。

目下のコロナウイルスにこの数式を当てはめると、まず「感染性はそこそこ高い」と言われている(数値は不明)。感染期間はどう見るか。軽症で終わる場合は7日、重症では10日以上、増悪から致命まではごく短いという臨床データもある。感染者の行動履歴を追うことは困難だが、数値は別にして「発症前に多人数に感染させる機会が多い」と見るべきだろう。とすると、けっこうやっかいである。

つまりわれわれ市民ができることは、「c」感染接触を減らすこと、人混みを避ける、集団活動を避けるなどとなる。それによって「1以下」にする手伝いをするしかなさそうだ。

小池知事の緊急会見をネットで見ていると、猫が肩に乗ってきた。猫は、ヒトはいったい何をアタフタしているの?と耳元でいいました。

最後に、国内初の具体的な症例報告を読みたいひとは、ぜひ自衛隊中央病院のリポートを読まれよ。さすが自衛隊はしっかりしています。ダイアモンド•プリンセス号から搬送されたPCR検査によるSARS-CoV-2陽性患者104症例で、胸部単純CT検査を行うと異常影が67%に見られたという。その3分2は症状変化なく軽快し、3分の1が増悪した(症例全体では87%が軽症であった)。PCR検査よりもCTの方が検査として有効であるらしいこと、重症症例でも既存薬で軽快したこと、きちんとした感染対策により院内感染はゼロであったことが銘記されるべきことのようである。


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