サメに恋して「ほぼ命がけ サメ図鑑」

人食いザメなぞいないことがよくわかった。いるのは「サメ食い人」である。

Facebookのアプリゲームで遊んで、個人情報をたっぷり食われている人がいた。それを見て、ふと「サメはほんとうに人を食うのか?」と疑問を持って、インターネットの海にちょこっとダイビングすると、本書に出会った。著者はシャークジャーナリストの沼口麻子さん。

ほぼ命がけ サメ図鑑」は痛快傑作深海大巨編である(2018年講談社)。仕事の本を読まなきゃならんのに、サメに食いつかちまったじゃないか!沼口さんは東海大学海洋学部を卒業後、同大学院で小笠原諸島でサメと戯れたのち、シャークジャーナリストを自称して独立した。

日本や世界のサメスポットへ体当たりした記録でもある本書は、サメのあれこれ知識、体当たりサメ図鑑、世界のサメ巡礼などで構成されている。だがいわゆる「科学読本」ではない。そんな堅ッ苦しくない。サメにつかまる沼口さんのイラストがかわいいように、図鑑というにはスケールがテキトーなイラストがいっぱいあるし、なんというかとっつきやすい。しかしよもやま話のエッセイ集というのでもない。科学の裏付けや環境保護の話もある。しかも文章がしこたま上手い。ひとことでいえば稀有な本である。

そもそもシャークジャーナリストってなんじゃい?彼女が造語して自称しているそうだが、ひとことでいえば……

サメに恋した人である。

恋したあまり、ダイブしてはサメと見つめ合う。サメの解剖もすれば刺身にもフライにもする。でっかいフィンでぶんなぐられて気絶もする。わずか体長18cmのサメの液浸標本を作ってリビングに飾ってうっとりする。本拠地は静岡県の駿河湾だが、サメと聞けば沖縄にも館山にも上越にもオートストラリにも、世界中に飛んでいく。人間探究者のぼくは、そういう沼口さんにサメ以上に惹かれてしまった。

サメに取り憑かれた日を彼女はこんなふうに書いている。東海大学1年のころ、どうしても水族館で働きたいと水族館に頼み込んで実習させてもらった。実習テーマは「サメの顎標本づくり」。ラブカというサメの頭を切り落とし、血まみれになりながら、何日もかけて鋭い歯の骨格標本を作った。出来上がった歯並びに、うっとりして目が離せなくなった。人生を変えたサメ標本。わかるなー。

サメ界の未来人登場コラムも楽しい。サメの化石1000以上も自分で発掘したのは沖縄の小学生の暖花ちゃん。沼口さんと化石ツアーに出るが、ジャーナリストはちっとも探せない。暖花ちゃんは「四つ葉のクローバーを探す要領よ」とホイホイと見つけてしまう。6歳の燈太クンは1歳からサメ好きというまさにサメ博士。沼口さんの講演を最前列で一心不乱に聴き取り、質問も真っ先にした。その数日後、母親にこう言った。

自分が世界で一番サメに詳しいと思ったのに、自分より詳しい人がいた、くやしくてたまらない…。

なんというサメ魂

ぼくは本書を読むまでサメといえば「ジョーズ」であり「人食い」だったが、すっかりウロコを削られるように目が開かされた。サメは人食いではない。サメが人に食われていた。何百年も生きるとか、何千キロも泳ぐとか、交尾方法もわからんとか、謎だらけのサメとわかりあえるのは素晴らしいことだ。沼口さんのいう「シャーキアビリティ(サメに対する知識や熱い気持ち)」がわかってきた。

本書には各地のサメ体験スポットリストもある。リゾートや水族館、ダイビングポイントだ。「サメと戯れることができる」のは首都圏から割と近い館山。ダイビングさえできればジンベエザメとも泳げる。潜れない人は「たてやま渚の博物館」というのもある。それならぼくでも行ける。台風のために打撃を受けた千葉県南部、観光でお役に立とうぜサメ詣で(^^)。

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