自分の中の免疫メカニズムをひしひしと感じている。花粉症予防の舌下免疫療法の成果である。まず検査結果を示そう。
非特異的IgE 186 IU/ml (2018年11月)→ 485(2019年6月)
すぎ 24.3(同) → 100以上(同)
ヒノキ 6.62(同) → 25.40(同)
舌下にシダキュアという、溶ける花粉エキス錠剤を乗せて1分間。これを毎日欠かさず7ヶ月続けた成果が上記の値である。非特異的IgE(アレルギーの総和値)は、昨年の「186(IU/mL)」もかなり高いが(普通の人は100くらい)、それが500近くまでなった。スギは4倍、ヒノキも4倍、つまり花粉エキスがよく染み込んでいる。ぼくは大丈夫だろうか?
ぜんぜん大丈夫(笑)かかりつけ医に聞くと「想定通りの値」で、もう少し上がってから落ち着いていくそうだ。1年から2年続ければ8割以上の人がラクになる療法、ぼくはたった4ヶ月で相当ラクになった。来年は鼻炎薬フリーになれそうだ。毎月2500円の投資は惜しくはない。
さて、何がからだの中で起きているのか?シダキュアの発売元の鳥居薬品のサイトから失敬した画像を掲載しよう。
くしゃみや鼻水のメカニズムは、Th2細胞というアレルギーを促進する細胞が増える。それがIgE抗体をつくって、くしゅんくしゅんとなる。舌下免疫療法はTh1細胞というアレルギーを抑える細胞を増やし、制御性T細胞という「免疫反応を抑える」細胞を活性化させる。戦うのがTh1細胞で、抑える役目が制御性T細胞である。ちょっと難しいがここが免疫のおもしろさを理解するポイントである。
同じ自分の体の中に、攻撃する細胞と、それを抑える細胞がいる。さらに「敵(ウイルスや病原体)が来たぞー!」と知らせる細胞もいれば、何もしないでポカンとしている細胞もいる。
歴史的には、細菌学者Paul Ehrlich氏が20世紀初頭に「免疫が自分の臓器や組織を攻撃する自己免疫という現象」を発見し、1950年代に二人の免疫学者MedawarとBurnetが「自分の中にいる自己と非自己」という概念をつくった流れがある。細胞が、相手を敵か味方か(自分の体かそれ以外か)を見分けるメカニズムがあることがわかってきたことで、がん治療薬から劇的な変化がもたらされつつある(いわゆるがん特効薬オブジーボ)。移植医療も変わるし、何もかも変わると言われている。
小さな細胞を見て、そこに人間存在の根本を見出すーこれはスリリングなことだと思う。
そのメカニズムを文化系的にたとえてみよう。仕事にアレルギーがあるとしよう。一生懸命やっても合わない、上司とケンカして休みがちになる。もがいているうちに情熱をなくす。仕事をウィルスとして、呑んだくれて悪口をぶつければいいのだが、つい「オレも悪い…」と自分を攻撃してウツになる……
恋愛でも似たようなことがある。最初は相手にアレルギーがあったが、だんだん「異物」ではなく、自分と似ているなーと思えてきた。あるいは逆に、相手が「異物」だと気付かず付き合っていたが、無意識に抵抗するようになった……
ワタシは「二食パンだ」と思い当たる多重的人格者もいるだろう。クリームとチョコの二つのまるで違う人格をひとつの体で包んでいる。昼の顔、夜の顔が分離しているのか、けん制し合っているのか。混じり合ってしまうと、自分が誰だかわからなくなる……
ここで深淵なる問いが発せられる。
外敵(仕事やエセ恋人)に抵抗する方がいいのか?受け入れる方がいいのか?独立して破産したり、はみ出す恋をして世間から総スカンをくらうよりも、お金のためさと割り切って平穏無事に勤め続け、運命の恋ではなく退屈だけど優しい人だし安定しているからと、自分を納得させていくのか……。
人は常に道に立たされ、道を選んで進む。細胞が「敵か味方か」「戦うか抑えるか」と日々やっていることを、ヒトもまた日々やっている。
とすると、もう一歩深淵なる問いを発したくなる。
細胞は私たちの人生を映しているのではないか。その人の細胞の免疫力の強さや弱さ、攻撃や制御と、その人の生き方の強さ弱さ、道の選択や意思決定とは、密接に関係があるのではないか?細胞と心は全面的に依存し合っているのではないか?
その人の人生は、その人の細胞動態を見ればわかるーというのは言い過ぎだろうか?ウツだって脳内物質のアンバランスだとわかってきた。ヒトの運命地図は、その生命地図の細胞に、すでに描かれているのではないか?
花粉症の話からずいぶん遠くにきた……(笑)ここ50日、すっかり疲弊したので、今日は心身のリハビリテーションを兼ねて、仕事で勉強したことに空想をつけて書きました(笑)次のブログから正常にもどります……落ちたぼくの心を探しながら。
「現代免疫物語 beyond 免疫が挑むがんと難病」は非常に好著。3回読みました、星5個です。
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