食品ロスの真犯人を探して

事件は現場で起きているという金言通り、食品ロスも現場で起きている。スーパーやコンビニでだけではない。冷蔵庫でもレンジ台の下の食品庫でも起きている。真犯人は「自分」なのだ。

最近泣く泣くゴミ箱に埋葬したのはキュウリだ。冷蔵庫の最下層でしんみり泣いていた。ごめんね。消費期限が数ヶ月前のラー油はもったいないぞ。ぼくの舌は酸化に強いから使ってあげるね。なにしろ日本では年間643万トンの食品ロスが発生するが、そのうち291万トン、45%は家庭から出ているという。

本書『「食品ロス」をなくしたら1か月5,000円の得!」の著者井出留美さんは、食品ロスを社会ムーブメントにして、政治や大企業を動かしたキーパーソンである。彼女が憂えるのが家庭でのロスだ。ぼくは独居自炊派の一人として、本書を読んで膝を打ちまくり、今日から実践をしようと思うこと多数。

「余分なものを買わないワザ」「買ったものを全部使い切るワザ」「ロスにしないアイデア」「ロスを出さない買い物テク」「上手な保存ワザ」などの章立てで見開きでワンテーマ、その日その時その瞬間から実践しやすい。誰かのコツやコンセプトではなく、井出さんの体験や実践からのテクやワザというところがミソである。

ここでそれをバラすのはヤボなので、僕なりにヒザを打ったポイントを書こう。

井出さんは本書で「使い切るワザ」をたくさん紹介しているが、ぼくが実践しているのはナスのヘタである。これがごま油で炒めると旨い。一方、ぼくはネギ好きだが、青いところが苦手でばっさり捨ててしまう。井出さんは青ネギが似合う料理を紹介しているが、ちょっと一人では…という料理だ。そういえば知人の料理研究家は「青い部分は冷凍してスープの出汁にせよ」と言ってた。ほぉ!井出さんも似たことを書いていた。

まとめ買いはやめよ」と井出さんは言う。一人暮らしにはローソン100がよく似合う。お一人様スーパーで十分だ。それはさておき、ぼくはここに一つ核心があると思う。人は食べ過ぎてはダイエット食を食べる。飲みすぎては二日酔いを抑えるドリンクを飲む。高血圧になる食生活をしては降圧剤を飲む。おかしくないか。入れなければいいのだ。それができないところに、食品ロス問題の根っこがあり、現代人の抱える病巣があるような気がしてならない。

福岡県のスーパーまるまつの話が出てくる。ここは社長が毎朝4時に魚を仕入れる。海が時化て魚が入らない日は仕入れない。きっぱりしている。一方、大量仕入れ大量販売やロジスティクス革命で「価格破壊」を成し遂げたと大企業は自慢する。だがそのビジネスモデルはいつのまにか補給路が伸びて、消費者に押し付けても余って、末端で大量にロス出ている。販売予測や陳列技術やクーポンなど、あの手この手で売ろうとするが、なんのことはない、「産地と消費地が直結した暮らし」が失われただけではないか。

広島の捨てないパン屋「ブーランジェリー•ドリアン」が紹介されていた。なんだろーと思って調べてみると、最高級の十勝産有機栽培の粉を使い、具材をなくして原価を抑え、日持ちは2週間以上だという。無人販売で売り、売れ残ったら野菜の移動販売所に託す。なんたる素晴らしいパン屋よ!うれしくなった。

本書には明るい装丁で「お得」「ロス」「もったいない」といった内容が、生活者視点でたくさん詰まっている。それはものすごく役に立つ。だが読み進めるとそれだけじゃないことに気づかされる。「暮らしのヒント」的な皮を一枚ずつ読んで剥いていくと、「エコってなんだろう?」と、いつのまにか地球のことを考えている自分がいる。

政治とか環境運動もいいけれど、食品ロスを減らすのはそこからじゃない。自分からやること、家や買い物で日々やることだ。当たり前のことなのだ。当たり前ができなくなった私たちから剥ぎ取ったものにこそ、食品ロスの真犯人がいるような気がしてならない。

キャベツを長持ちさせるのはそうするのか…(本書にワザの紹介あり)。

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