あなたのキーワードはなんですか?

医師の一生を描く「ドクターの肖像」原稿にどっぷり浸かっている。締め切りが重なってやや窮地であるが、アタフタせずに書けるだろう。というのも、自己自慢ではないが、ようやく「肖像」の執筆ではまあまあプロになったかなーと自負をもてるからだ。それは、自分にしか書けないものが見えるようになったからだ。

人間を書くとはどういうことだろうか?それはその人の「XXXX」を書くことだ。最近号の医師たちを見ると……

眼科医は「治す」だった。
頭痛医は「人生」だった。
病理医は「自立」だった。

その人を軸にして描いていく単語を「いただく」のである。その単語「XXXX」は、その人の人生のキーワードである。いかに生きてきたか、いかに行動してきたか、いかに考えてきたか、悩み泣き喜んできたか。人は誰しも自分のキーワードの周りを歩いている。

キーワードは何度もその人のことを考え、読んでいると「降りてくる」。

技術的(または作業的に)どうかといえば、まずインタビューの文字起こしがベースになる。それは単なる「起こし」ではなく、調べながらの「リサーチノート」になる。生まれた地や父母兄弟、学校の特徴、専攻や得意なこと、エピソード……。対象が医師なので、その専門分野の医療の歴史まで調べることもある。もちろん印刷された言葉はさらう。医師であれば著書や論文である。専門用語がむつかしければ、読んだふりをする……^^

ひと段落つくと、文の「仮の構成」を考える。基本的に時系列。イベントごとに取捨、整理をしていく。仮の構成ができあがると、疑問が湧いてくる。

この人はどうやって生きてきたんだろう?この人の人生をひとことでいえばなんだろう?

それが「XXXX」すなわちキーワードとなる。キーワードをベースに借りの構成を「実際の構成」に修正する。それから書き出す。もっとも気をつけることは「考え」を書くのではなく「行動」を書くことだ。キーワードをめぐってどう格闘してきたか?である。

キーワードをより意識できるようになったので、最近の肖像の文が(ますます^^*)よくなった。とはいえ、かつてもキーワードは意識はしていた。たとえばこんな言葉である。「未踏の人」「オンリーワン」「劣等感」「探偵」……悪くはないのだが、かなり皮相的だった。「レッテル」みたいなもんだった。それで書いた文は、掘り下げが少なく、つまり「まだまだ」だった。

そのひとのさらなる根源へキーワードを探すようになったのは、取材がうまくいかなかったある医師からだった。あまりエピソードも引き出せず、話が具体性にとぼしい。だが直感的に、その医師は凄いひとだとわかった。キーワードは何か?「歴史」である。歴史という言葉を軸に、そのひとの業績を見ていくと、凄さがわかってきて、文が組み立てることができた。

ひとはみなキーワードに「支配」されている。いや支配というのは正しくない。運命的に、その言葉の周りを生きていく、そうしてしまう。それがキーワードである。

その言葉がポジティブで、スケールが大きいほど、その人は世間的に大きな仕事をする。その言葉がネガティヴで、うちにこもるものであれば、世間的には小さなものとなって、結局その言葉の周りをぐるぐると歩いて、一生を終えるかもしれない。まあそれもまた人生である。

たとえばぼく自身は「愛したい」がキーワードである。そうしたいのにそうできない、そういう体験に囚われており、もがいて生きてきた。ぼくの飼っている猫のキーワードは「甘えたい」である。前の飼い主にネグレクトされて、しかも捨てられたという過去を背負ったからだ。甘えん坊で困る。あるひとは「耐えている」である。いろいろな辛苦にずっと耐えて生きている。解放してあげたい。

つまり本当のキーワードは、「夢」や「飛躍」、「人助け」といったレッテルではない。誰もがもつ表層的なものではない。そのひとの全存在に関わるものだ。自分の底に突き当たる言葉を自分で意識できるようになれば、それがかならず突破口となる。根源から力を引き出すものだ。自分のことを話して、書けるようになるだろう。

さて、あなたのキーワードはなんですか?

数日前のストロベリームーンは綺麗でしたね。ひとつ余談。ここ数日疲れが深いのは、今書いている医師が巨人だからだと気付いた。尊大とか体が大きいとかではない。人間が大きい。ぼくは経験も積んで、相手の大きさに飲まれることは(あまり)なくなったが、相手が巨人であればそのスケールまで背伸びしなければならないので、疲労が深まるのでした……^^;

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