吹田市の交番を襲撃した拳銃強奪犯は捕まったが、捕縛される際、職質を受けたのだろうか。指名手配だから問答無用でお縄だろうか。
それはわからないが、僕は先日職質を受けた。近所の路上である。
昼下がりに自転車でスーパーに買い物に出かけた。買い物は蕎麦やネギやひき肉や切り干し大根やカルピスウォーターなど、きわめて小市民的である。さあて買い物終了、帰ろう…と自転車の前かごにいれたマイバッグから、万能ネギが突き出していた。
つらつらと二車線道路の歩道をゆっくり自転車で行くと、同じ進行方向に進む軽自動車のパトカーが見えた。道路の向こう側である。僕が大きな駐車場のある携帯ショップの前まで来ると、その軽のパトカーが向こう側の車線から、わざわざ転回して、その駐車場に来るではないですか。なんだろう…?と思っていたら、ドアが開いて中年の男性警官が出てきた。
「ちょっとすみません!」
誰に向かって言っているの?と思えば、僕だった。ネギの突き出たカゴの自転車を停めると、パトカーからもう一人、中年の警官が出てきた。第一の警官が言った。
「最近、自転車の盗難も多いものですから…。ちょっと降りていただけますか」
え!僕は疑われている…?(^^; ちょうど通りかかった、見ず知らずのおばあちゃんが、僕のことをジロジロ見た。僕は強がるように「いま、怪しいと言われて職質受けてます」と話しかけた。おばあちゃんはますますジロジロみて、去っていった。第二の警官は「?」という顔をしてたが「あ、そういうことか…」とつぶやいた。僕は自転車を降りて昂然と言った。
「どうぞ番号を調べてください」
と言いながら、喉元まで出かかったのは「もっと怪しい人もいるし、携帯をいじくりながら自転車に乗る人だっているんだから、そっちを注意せよ!」という言葉だが、のみこんだ。ほんとにマークされるとややこしいので。警官は、携帯機器に僕の自転車の番号を入力していた。
「すみませんがご住所は…?」
一瞬、住所が記憶から消えた…^^;
「ええと…この近くです…」
と言ってから思い出して、住所を答えた。警官は僕には聞こえない舌打ちをしたようだ。今日はポイントゲットした、署まで同行願います、と久々に言えるとほくそ笑んでいたのだろう。当てが外れてごめんな。警官は言い訳するように言った。
「こういうのはフツー若いひとが乗るからねー」
警官はカマキリ型のハンドル、荷台がくいっと曲がっている点、変速機の破損防止(または二人乗り用)の後輪用の突き出たバー(原則として違反である)を指摘したのだ。この自転車は個人から有料で譲ってもらったもので、自分で防犯登録した。買った相手は30代くらいである。だからあながち間違いではないのだが…
これで無罪放免になったが、このことを知人に話すと大笑いされた。僕は痩せてて、世間から浮いてて、風体が悪いからだというのだ。笑うな。
確かに離婚して、一人暮らしで、猫を飼って、仕事はしているんだかしていないんだかわからない。本人としては、体は引き締まっていて、坊主頭でサッパリしていて、やや個性的なファッションではあると思っているが、世の中はそうは見ない。こいつは危ないと見ていたのだ。いまさらだがその事実に愕然とした…
世間一般はこうである。軽自動車に乗って、夫婦で買い物に来て、ポロシャツとチノパンを履いて、ちょっとお腹がでて、高血圧か糖尿の気があって、メッシュの軽快靴でも履いていれば、絶対に職質されないのだ。
まあ三歩ゆずって僕は一般的ではない。だが世捨て人でもない。無理に世に名をなそうと思っていないし、かといって隠遁もしていない。飄々として、きわめて自然体である。ブレない生き方がようやく身についてきたと思っている。
死ぬまでに役に立つ本を1冊、2冊書ければそれでよし。書けなければそれでよし。せめて「ドクターの肖像」は最近とみに評判がいいので、7500字くらいの肖像文では人に負けないものが書けるようになってきた。少数の国民の救いになる文を書ければいい。怪しいとはいえ、人を怪しいと疑うような職業ではない。だから胸を張って生きていく。
先日、怪しい空がありました…(だからさっき地震があったのだろうか)
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