弱気は自分がつくる蜃気楼である。
昨夜、考えごとをしていたら、弱気スパイラルにハマってしまった。自分の才能は高が知れている、だめなのは自分のせいだ、運も味方しない、もはやおだぶつか…と心が後ろ向きにくるりとムーンサルトした。ジンマシンもでてきた。連休に仕事と修行ばかりしているから、心のゆとりがなくなってきたせいだろう。こりゃ寝るにかぎると早寝をした。
ところが猫と食後の運動もせずに寝たもんだから、猫が落ち着かなくてピーピーニャーニャーと真夜中にうるさくて、何度も何度も起こされてますます心が乱れた。ペットは飼い主の心の鏡、ペット見て我が身を正せ、猫のひたいの狭さは我がひたいの狭さの表れ、自分のせいなのである。
真夜中に猫にごはんをあげて、心乱れてながらじっと膝を抱え、眠れんな…と思っていると、ふと先日読んだ大谷翔平選手の記事中のことばが思い出された。
メジャーリーグ野球のエンゼルスに所属する大谷選手は、現在肘の手術後の復帰途上にある。投手として今シーズンの出番は、不可逆的な損傷を負う可能性もあるのでムリであり、まず打者で復帰する予定だという。復帰への備えとして、ライブBP(実戦形式の打撃練習=Live Batting Practice)に入っているという。
ライブBPとはなんぞや。野球の練習のひとつのプロセスのようだ。ウォーミングアップ、ティーバッティング、フロントトスバッティングとだんだんと上げていき、BPに入る。投手がマウンドから投げて、打者は打ったら走る。「だんだん気持ちを盛り上げていく」練習、だと思った。
大谷選手のライブBPでの課題はこうだ。「打てそうな雰囲気を持って、打席に立てるか」。記事を引用しよう。
「(打席での)立ち方とか、投手の見え方とか、立っている時点でほとんど勝負は決まっているものだと思っている」。プレートとホーム間の距離18・44メートルでせめぎ合う空気感が、勝敗を左右するという。
打てるか打てないか、打撃はバッターボックスへの入り方が勝負だという。これはわかる。どんな仕事でも、うまくできるかできないか、始める前に予感があるものだ。今日はうまくいくだろう、今日はなぜか不安だな……と、予想予感予兆読みが伝わってくる。逆にいえば、私たちは入り方を良くするために、しっかり準備をするなり、気持ちをあげていくなり、縁起をかつぐものである。
仕事でなくとも、たとえばデートをするときでも同じだろう。うまくいくかどうか、入ったときに決まっている。いや、入る前に決まっているのかもしれない。どこに行くか、何を着るか、何をするか、何を話すか、何を食べるか……その選択で決まっている。
野球なら相手との勝負、仕事ならやり方、恋人なら愛し方である。どうしたらその「入り方」はよくなるのだろうか?
自分なりに思う方法は三つある。まず「寝ること」である。
寝ることによって、起きていたときのことがリセットされる。あれこれ悩んだり考えたことが整理される。それで、入り直すことができる。
二つ目は「呼吸」である。その場の雰囲気に飲まれず、無駄に空気を乱さず、かたくなにも、優柔不断にもならないようにするためには、呼吸を整えることだ。丹田呼吸、腹式呼吸、胸呼吸、なんでもよかろうが、とにかく自然なリズムをとりもどすこと。
三つ目は「間(ま)を視る」ことである。投手と打者の間にあるものを視る。相手の強気や弱気を視て、自分の打てる姿を視る。仕事なら顧客や上司との間にあるものを視る。どうすればみなが喜ぶのかを視る。恋人と自分の間にあるものを視る。過去のケンカやイザコザやナミダを越えて、こうあってほしいという、二人に共通するゴールを視る。
入り方が定まれば、出口も定まる。そこまで視えれば落ち着ける。
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