人生100年時代の四つの支点

人生100年時代だという。「シニア時代をどう生きるか?」誰もが答えを用意する時代になってきた。

ある還暦の外科医が「80歳まで現役」と決めてロボット手術に取り組んでいる。お茶でも飲みながら座ってできるからね、と笑う(ロボットは遠隔操作である)。日本政府は年金支給を遅らせる野望もあって「65歳定年」「定年後給与7割支給」を打ち出す。自治体でも神奈川県は「人生100歳時代の設計図づくり」を推進し、小泉進次郎氏は「現役の定義を見直せ」という。なんやかんや「何をするか」「どう生きるか」もう一度考えなければならなくなってきた。

僕はどう考えるか?ドイツ人作家エーリヒ・ケストナーの言葉にヒントを見出した。

ケストナーの『子どもと子どもの本のために』の中に、「アルキメデスの四つの点」という話がある。ケストナーが語った新年のあいさつの中で、アルキメデスが「私に支点を与えよ。さすれば地球をも動かして見せよう」と言ったという故事を引いて、「支点とは何か?」を問うた。支点とは、何かを成すときの正しいポジションである。

ケストナーがあげた「人間の世界を正しく持ち上げる四つの点」をコメントをつけながら紹介しよう。

第一の点は「人間はみな自分の良心の声を聞きなさい!

100歳に向かうときに持つべき良心ーそれは正直、正義、正論だと思う。それまでの生涯、妥協し、怒りを抑え、言葉を飲み込み、汚いものも飲んできた。第二の人生でそれを繰り返したくないでしょう。だから僕は原発反対、戦争反対、人種差別絶対反対である。

第二の点は「人間はみなお手本を探しなさい!

お手本にはその人のやりたいことが投影される。ありたい姿が表現されている。幸いにも僕は去年、ケストナーというお手本に巡り合った。以来文章だけでなく、彼の生き方もずっと学んでいる。

第三の点は「人間はみないつも子どものころを思い出しなさい!

子どものころを思い出すとは「何が本物で、何が偽物で、何が善く、何が悪いかを、とっさに、長く考えずに、知ること」だという。子どものころへ降りていく糸を垂らしてみたい。

第四の点は「人間はみなユーモアを持ちなさい!

とりわけ男は頑固頑迷怒りっぽくなる。だから痴呆ではなく阿呆になりたいものだ。何を言われても「そうですか、そうですか」とニコニコする老人になりたい。

以上の「ケストナーの四つの支点」を胸に秘めて僕は生きたい。70歳、80歳を生きる。自由な立場で、人間を正しく持ち上げる文のイノベーションを起こしたい。

さて姿勢はそれでいいとしよう。問題は「何をするか」である。それを考えるときにヒントになる言葉が「セカンドライフ」である。

ある起業家に教わった言葉だが、要するに「第二の人生」である。ある人が、ひとつのことを会社で成し遂げたとしよう。設計や製造でもいいし、営業やPRでもいい。会計や人事もいい。そしてその会社を定年退職した。「次に何をしようか?」と考えたとき、やり遂げたことをベースにしつつも、本当にやりたかったことをつないでいく、それがセカンドライフだ。

典型的な例はサッカーの中田英寿の「日本を紹介する」仕事である。サッカーで頂点を極めた男は、日本の名酒を探訪し、酒職人など感銘を受ける人びとと共に歩む姿勢をアピールする。また、ある世界的ながんの外科医は、退官後にキリスト者になり、がんに罹患した患者やその家族と「最後の人生を語り合う場」を運営している。

定年だ、再雇用だ、だがスキルが陳腐化している、低レベルの仕事しかやらせてくれない…という実情もあるだろう。だが第二の仕事は単なる過去の延長線ではない。「第二の人生」なのだから「良心に従って本当にやりたかったこと」を追い求めてほしい。それは決して「趣味」ではない。誰かに影響を与える「仕事」である。

僕にとってセカンドライフは「書くこと」だった。40歳から少しずつ書き始めて、お金を少しもらえるようになり、50歳になって文章になってきて、それから8年たって、時に拙文が入り交じるが、医師の物語(ドクターの肖像)ではようやく自分にしか書けないものが書けつつある。

僕のテーマは「人間を書く」である。そのためにどうするか?「人に会う」ことだろう。市井の人でもいいし、高名な人でもいい。人に会って人を洞察する。会うためにどうするか?名刺代わりになる文章が必要だ。「ドクターの肖像」はそのひとつになってきた。もう一冊、みなが読める本を書きたい。

今朝は、ケストナーの四つの支点を胸にセカンドライフを決めて、そこから実行していくことを書いた。あなたも60歳以降の人生を考えてみませんか。

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人生100年時代の四つの支点」への2件のフィードバック

  1. 素敵な文章です。四つの点は参考になります。またセカンドライフは本当にやりたかったことをやるという意見もぜひ参考にしたいです。ありがとうございました。

    1. どうもありがとうございます!四つの支点、僕もとても良いと思います。ケストナーという人の真髄がぎゅっとなっている感じがします。
      ちょうど今、先ごろ亡くなった兼高かおるさんの本を読んでいたら、彼女は「42歳定年説」と書いています。大卒22歳から会社勤め20年で一区切り、そこから次の20年は社会のために働き、その後の20年は自分のために、と。さすがは兼高さんですね。ありがとうございました。

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