腎臓という生き方

RenalかKidneyか、それが問題である。調べて迷いこんだのは医学英語研究家のコラムだった。

辞書をひけば「Renal」は「腎性の」という形容詞で、元はラテン語系だとわかる。「Kidney」は「腎」という名詞だが、語源を調べていくと、英語にくわしい方のサイト『 医学英語の知られざる一面 』を見つけた。おもしろいので読んでみた。

執筆者の大井毅先生(歯科医師かつ医学英語研究家)いわく、「医学用語を構成する英語の語幹は600位ある」。1日2個のペースで覚えれば、1年で辞書がなくてもチンプンカンプンな医学英語が分かるというが。ちょっと多すぎ…^^; そこで氏は次のような重要語幹をあげる。

a-は「無、非、不、失」でたとえばamelia「無肢症」、anoxia「無酸素症」
algiaは「痛み」を表し、abdominalgia「腹痛」
-ia は「疾患」を表し、lukemia(白血病)、anemia「貧血」
-itis は「炎症」で、hepatitis「肝炎」、nephritis「腎炎」
logyは「学」ですね。pathology「病理学」、nephrology「腎臓病学」
-tomy は「切開」:anatomy「解剖」
-ectomy は「切除」:appendectomy「虫垂切除」、nephrectomy「腎切除」

なるほど。名医の物語を書く上で、英語の医学論文もさらりと読まねばならぬ我が身に参考になった。ケッサクなのが「学名」に関するつぎの一文である。

学名を表す「科」「属」「種」の英訳は、それぞれ”family”, “genus”, “species”。その順序を覚えるため、この3つの用語から頭文字”f”, “g”, “s”をとって、「ガソリンスタンドの上にファミリマートがある」と覚えたら、いかがでしょうか。

そういうコンビニはたぶんないけれども。さらに大井先生いわく、癌の英語「cancer」は知られているが、専門的には「carcinoma=癌腫」というそうだ。癌かどうか、どうしても診断がつかない場合には、医師はカルテに「GOK」と書く。それはすなわちー

God only knows.

神様も診療報酬がほしいのだろうか…?(^^;

さて、なぜ腎臓かといえば、執筆中の『ドクターの肖像』の医師が腎臓医だからである。その方は米国のテレビ番組に夢中になって以来医師を目指し、米国に留学し、国際的に活動してきた。英会話の達人のその方にとって英語は学びの武器であり、医療活動の道具である。

その腎臓医ほどではないが、僕もずいぶん英語を学んできた。ペーパーバックを読み、映画を観、ラジオを聴き、レターを書き、会話に汗を流し、TOEICも受け、そして今医学論文をナナメ読みする。僕にとって英語はなんだったか?

世界の扉を開ける鍵?海外放浪はしたけれども、結局帰ってきた。
ペラペラになる夢?英語でナンパしたことがない…^^; (されたことはあった)
仕事につくため?なんやかんや役には立っているけれども稼げるほど力はない。

つきつめていくと、僕にとっての英語は「ことばへの好奇心」のようだ。なんでもかんでも読んでやろう。本や新聞や雑誌はもちろん、看板やポスターや商品説明文や落書きや法律文やレシピなど、とにかくことばをおもしろがってきた自分がいる。

書くほうはどうかといえば、レターくらいはなんとか、とてもまとまった文は書けない。英文の達人は知っている。作家Kyoko Moriさんで、その小説『The Dream of Water: A Memoir』のネイティブよりもPlainでFineな英文にはぶったまげた。彼女は神戸に生まれ育ち、渡米後に小説やエッセイを書き出したというのに。

自分にとっての英語がわかったところで、冒頭のお題の「腎臓=Kidney」の語源である。

英語通訳者(柴原早苗氏)によれば、Kidneyの語源は「気質」という意味の中世英語だそうだ。「She is a person of the same kidney.」といえば「彼女と私は同じタイプね」となり、「a man of the right kidney」は「まっすぐな人」という意味になる。

腎臓は血液浄化や水分調節、ホルモンバランスを整えるなど、からだの重要な諸機能をつかさどる臓器である。だから英語では人間の「生き方や特徴」を表す語があてたのだ。いうなれば、腎臓医の“腎臓”は英語であり、Kyoko Moriさんの腎臓も英語であった。

僕の“腎臓”は「ことば」である。

書くことには集中できるし楽しめる。書けば蕁麻疹もおさまる。それがわかってきたので、書き仕事に精を出しています。さて、あなたの“腎臓”はなんでしょう?

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