都心郊外の小さな私鉄駅、それなりに通勤通学もあるし、車通りも人通りもある。栄えてはいないが枯れきってもいない。そんな我が町の商店に何が起きているか見てみよう。
4週間ほど前にシャッターが降りたのは“トリ屋”だった。
駅前角地のビル1Fと立地はいい。かつては“メロンパン屋”だった。声を嗄らして「焼きたてのメロンパンいかがですか!」と女子が叫んでいたが、やがて声は枯れ、事業資金も枯れた。なぜメロンパンだったのだろう?100円均一でいろんな菓子パンを揃えるだけで売れるだろう。
代わって開店したのがその「トリ弁当屋」である。看板にはそう書いてある。ところがメニューを見るとまず「青椒肉絲」である。「ええ?トリでなく豚…?」謎のメニューには、唐揚げ弁当も鶏そぼろ弁当もなかった。コンビニで人気の唐揚げのお持ち帰りもなかった。店主はおそらく「自分が作りたいものを出していた」のだろう。だがこのエリアはまったく洒落てない。路地に“焼き鳥スタンド”があるが、あんがい客が集まる。そういうエリアである。
そのあと2週間ほど経って、駅ビル内の“セリア”が閉店した。
100円ショップの大手の一角。割と大きな店で、日用品を中心に品揃えはまあまあだった。お客も途切れないように見えた。原因は販売不振なのか人手不足なのかわからない。ただ品揃えは、僕から見ると中途半端で奥行きがなかった。通り一遍でなんでもありますよ、でも種類が少ない。他のセリアにある品もないことが多かった。例えばセリアのアピールポイントの「手作り」を押す。ケシハンゴム、アクセサリー、がま口金具、針や糸…と品揃えを深くする。品揃えにメリハリをつけられれば、生き残れたのではないだろうか。
さらにおばさんが一人で営んでいた美容室が飛んだ。
どう見てもお客不足だった。理美容室は(知る人ぞ知る)コンビニより店数が多い業種である。この店から歩いて1分以内にも、5店舗か6店舗の美容室がある。日本全国、歩けば美容室に当たる。なぜか。パパママでやれば人件費は低く、自宅改造なら設備負担も少ない。都心ではないので技術もそこそこでいい。必要なのは固定客、1日3名客があれば十分維持できる。それならできるだろうと店を開き、潰れていく。
新聞を開けば「わが町のイオンが撤退する」と大騒ぎした地方もある。日本全国で似たような町がいっぱいある。栄枯盛衰は世の掟とはいえ、少子高齢化に不況続き、インターネットという脅威もある。構造不況なのだ。
しかも消費税の増税である。その増税をカモフラージュするのは政府である。コンビニで「持ち帰り飲食は8%、店内飲食は10%」だけでも混乱なのに、ポイント還元にキャッシュレス、地域商品券など「消費税還元策」はワケワカメである。
政府はクレジットカードやポイントカード利用で2%を減税するというが、それはクレジット会社やポイント会社(いずれも金融系商社系大企業だ)に利するだけだ。そのサービスを導入するため、毎月数千円の費用と、利用ごとの手数料(3-5パーセント)を払うのはお店であることを消費者は知らない。たかだか3%というなかれ。吹けば飛ぶような利益でやっている。小さな店の利益を食らうのが大手企業、その大手を支援するのが政府である。
お店はつらいよ。
自治体の融資支援は無力だ。欲しいのはカネではなく客だ。教科書勉強で取得した中小企業診断士の助言だろうか。僕は資格者だがあれは空理空論である。なにしろ教科書が時代遅れ、経済成長時代のルールで書かれている。たとえば立地分析ひとつ役に立たない。今はネットとの立地争いがメインである。店舗知識も役に立たない。手元のスマフォで全国の同一商品最安値が瞬時にわかる。売れる品揃えはどうすればいいのか?資格者に聞いてもわからんよ。
かくしてお金はネットに流れ、店は閉じ、地域はすたれる。小さなお店を助けることはできないのだろうか?
僕にひとつだけできそうなのは「言いたい放題のアドバイス」である。前述したように、「メロンパンはやめて普通の菓子パンにしなさい」「青椒肉絲でなく唐揚げ弁当にしなさい」「手作りの商品を増やしなさい」「売れないフードコートをやめて100円カフェにしなさい」など、地に足をつけた生活者アドバイスはできる。
いや僕だけではなく、地域にはたくさん言いたい放題できる人がいるはずだ。
地域の消費者の言いたい放題を告げやすくする方法はないだろうか?たとえば「言いたい放題アドバイス歓迎」シールを店頭につける。助言者には茶を出して聞くというルールをつくる。あるいは「言いたい放題の商店街支援アプリ」をつくる。町内に目安箱をつくる。どんな手段でもいい。ただ店主は「開いた心」を持って聞いてほしい。それだけが時代を超えた問題解決策である。以上、シャビーな郊外の居住者からの妄言でした。
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