バンクシーを消せ!

オークションで落札されたバンクシーの作品がシュレッダーされたニュースを見て、うちにバンクシーの本があるのを思いだした。

Home Sweet Home』(2012年刊行、翻訳は作品社)をめくると、彼の落書き作品がある。落書きなのですぐに消されてしまったものも多い。当初はスプレーで落書きをしていたが、あるときステンシルの使用を思いついて以来、シャープなメッセージ•ペイントに変化していった。

“匿名”の作家バンクシーは、ステンシルとスプレーで壁や家やビルに落書きをしては姿をくらます。落書きは名無しがやるものという伝統に従っているのだろう。本書によれば1974年ブリストル生まれで、時々市中で「発見」もされているので、聖飢魔IIの素顔と比べてどちらが謎かと言われると、よくわからない。

リアルなバンクシーが誰であってもいい。それより匿名にすることに彼の狙いがある。

市中には「アーティストでござい」「売りたいでござる」という人びとがいっぱいいる。そういうアーティストをあざ笑うように「無名」であることを売りにするわけである。そこにはすでにアートがある。

そもそもアートとはなんぞや。

「職人技」?ノー、それは修行であり芸である。それはある枠組みの中で行われるもので、アートとは真逆である。アートとは「衝動」なのか?半ばイエス。だがそこには計算もある。常に観るものとの心理的かつ物理的距離が計算されており、その距離を縮めたり広げたりして、観る者が途方に暮れるさまを楽しんでいる。アートとは「破壊的」か?イエス。ただし、壊すものがいわゆる「大人の常識」ではあまり惹かれない。何を壊すか?どう壊すか?というところに意外性があることがアートのアートたるゆえんがある。

その意味で、あの“シュレッダー”はなかなかアートであった

オークションでプリント画に1億を超える値段がついた。型で描いた瞬間芸をそれと不釣り合いな豪華な額に収めるというアンバランスの演出。しかも値付けされた瞬間、シュレッダーで刻むという破壊的行為。バンクシーが壊したものは何か?オークションという「市場価値」や「市場価値にすがる人々」、そして絵はうやうやしく保存されるべしという「希少価値」である。

しかし予行ですべてが裁断された作業が、途中で止まったのは故障なのか?いや、シュレッダー装置は無線のボタン操作なので、だれかがストップしたのは間違いない。バンクシーに知らせずにオークション側で行われたとすれば、バンクシーの狙いを破壊せしめた美術市場の勝利である。やはりバンクシー自身がストップしたならアートは社会との「境界線上」で成立しているのだ、という実にアートな演出であった。画像はバンクシーのサイトから

さて本書は、日本人訳者によるバンクシーへのインタビューも付録している。その内容はともかく、僕ならどんな質問をするか?バンクシーはどんな答えをするか?それを空想してみた。

Q:アートは大衆の常識を破壊する。しかし大衆の庇護のもとでしか生きることができない。そこには自己矛盾がないのか?

A:その矛盾、説明不能性こそアートなんだ。落書きが高値で売れるなんておかしな話だろう?そのアイロニーがアートなんだ。

Q:君はオークション収益をもらうのか?

A:もちろん。すると税務署員が僕の正体を知る。バンクシー、確定申告をするってね(笑)アートで徴税をする、申告側もペイント代を控除するなんて、実に滑稽な話じゃないか。

Q:ヒトの滑稽さを笑うのがアート?

A:いい質問だ。人びとが大好きな真善美を笑い飛ばす。そこにある欺瞞や偽善をえぐりだす。偽善者の顔を赤らませる。世界にはびこる暴力を嗤う。暴力とは救済を求める孤独な心から流れ出るものだからだ。本当はみんな火炎瓶よりも花束を投げたいものさ。人間社会は滑稽でもあり絶望でもある。それを描くのがアートなんだ。

Q:社会の中でアートを感じるものがあるか?

A:そうだな……、マクドナルドの「スマイルゼロ円」は実にアートだ。原価率10%の商品を売って笑わない会社はない。それをゼロ円です、とPRするのは凄いアートだ。あと最近、香港の航空会社の機体ペイントでスペルミスがあっただろう?あれはぼくたちの仲間のしわざさ。

Q:故意にやったことだと?

A:はっきりということはできない。でもあれもステンシルだろう?あれこそアートだね。なにしろ現代社会は牧歌的に見える村にも監視の目がある(下図はバンクシーのサイトより引用しました)。その中で息を殺しているのが私たちだ。だから常に社会に闘争を仕掛けないとやられてしまう。ぼくらアーティストはその先兵ってわけさ。

ではあなたはバンクシーを買うか?

ぼくはバンクシーの作品は(仮にお金があったとして)買わない。街中にある落書きだからこそ生きているからだ。家では落書きを嘆賞するものではない。むしろ、街中にある彼の落書きをオークションにかけて、誰かが買うのを見てみたい。そして落札後、落書きをモップで消す清掃員を登場させてほしい……(^^*

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