西日本大雨大災害(仮称)の医療情報支援

私が“ドクターの肖像”を連載させていただく『ドクターズマガジン』を発行するメディカルプリンシプル社では、今回の西日本大雨大災害(仮称です)で、早急なる医療支援の一助を担う気迫を見せている。西日本の災害地域での医療人材支援を検討中らしい。

そこで私も少しでも何かをと思って、どんな医療支援情報があるのかネットを探ってみた。次の図は厚生労働省の資料から拝借した。

目下の超急性期は救出及び外傷治療である。自衛隊の力を借りて、地域の医療資源を最大効率化させて救命をしている。このあと集中治療の急性期に入り、まだ今夜も豪雨は続くが、外傷治療だけでなく慢性病管理も大切な時期に入る。その後はメンタルケアも必要になっていくし、暮らしをたてなおす時期に入っていくという図である。

ひとつオススメは、事前にも事後にも役に立つ日本内科学会の「日本内科学会 災害医療アプリ」である。

病院編、避難所編、在宅医療支援など非常に網羅的かつ必要な情報がある。災害の事前準備や事後対応で有益な情報が詰まっている。ぜひダウンロードするべし(もちろん無料、アンドロイドはこちら)。

このアプリ制作のもとになったのは、サバイバルカードという研究で、たとえばそのなかの「災害3日目以降:病院編」には次のようなポイントがある。

外来の再開
患者が殺到する救急外来や救命センターでの受け入れは制限できず,災害時の病院機能の大半はそこに傾注される.従って,定期外来の再開時期決定や受け入れ規模は悩ましい問題である.

検査
検査機器の破損などで検査不可能なものがあったり,時間がかかったりする.必要に応じて,制限や優先順位づけをする.

診察・処置スペース
病院内も被災の影響があれば,診療・処置スペースの確保は難しくなる.建物の被災状況を確認して,患者待合スペースや患者・スタッフ動線の確保など,診療についての環境整備が重要である.

医師、看護師、コメディカルもたいへんですが、トリアージの要領と人海戦術で乗り切る。そこでは医療者以外の経験あるボランティアも活躍できる余地があるだろう。

避難所の健康管理
常用薬がつぶれた家の中にあって取り出せない.紛失してしまったということもあり代替薬の支給も考慮する.また不眠や便秘,いつもより血圧が高いなどの訴えが多く聞かれる.避難所は時に過密状態になるので感染性胃腸炎やインフルエンザなどの感染症対策2・3)も必要である.

ちょっと年式は古いが(2005年)、国立国際医療センター病院長 近藤達也先生のまとめられた「災害後亜急性期医療支援活動に関する研究班の提言」には具体的な医療班活動マニュアルがある。

大規模災害時に医療チームが入りやすく、また、救護所の医療情報を把握しやすくするための対策として次のことを提案する。
(1) 地域防災計画のうえで大規模災害時の避難所を定め、収容可能人数に応じた必要医療チーム数を想定しておく。
(2) 防災計画作成時には医師会との協力体制が必要
(3) 避難所と救護所を書いた地図を作製し、災害発生時には医療チームが各自治体へ直接出向くか、インターネットを通じて地図を受け取り救護所を目指す。
(4) 小規模避難所は、複数で1 ケ所の救護所をおいたり、大規模避難所は複数の医療チームを置く、巡回診療班を計画する等、地域の実情に合わせて柔軟に検討し基本的な医療班の配置数を決める。
(5) 救護所毎に、診療スペースや、医療チームの居住スペースをあらかじめ定めておき、当該場所は避難者の生活スペースとしないこととしておく。

具体的には次のような体制を地域に確立する。

この取り決めをすることで次のメリットがある。

(1) 医療班は混乱した状況下であっても検討をつけて活動場所を探すことができる。
(2) 短時間で医療活動を開始することができる。
(3) 医療チームの活動状況を容易に把握できる。
(4) 自宅居住者や車上生活者も何処に行けば医療を受けられるかが明確になる。
(5) 地図は救援物資を届ける際にも利用することができ、救援物資の大規模避難所集中化を防ぐことができる。
(6) 地元医師会も協力体制をとりやすくなる。
(7) 地図はボランティア活動者も利用できる。

要するに医療者が効率よく効果的に働けるワークスペースとプロセスを確立することで、救護が必要な人も支援を求めやすくなる。助ける、助けて、をいかに目にみえるように、聞こえるように組織し伝えるか。混乱する被災地ではこれが最大のポイントだ。

また災害では外傷者が発生するばかりでなく、避難した人は慢性病が悪化するものである。そこでは総合医もしくは内科医の活動が期待される。日本老年医学会がまとめた『一般救護者用 災害時高齢者医療マニュアル 』には、避難所での高齢者の重要な疾患の特徴と予防法として、さまざまな症状が挙げられている。そこから4つほどあげよう。

虚血性心疾患、高血圧の患者さん
心臓病の薬の服用情報を聞き出す、それを周知させる、お薬手帳が紛失していればメモをつくってわたすなどもできる。

思い出したのは「血圧測定は聴診器でできる」という故日野原先生の教えである。聴診器をあててカウントするという簡易な測定でも十分用が足せる。この機会に看護師さんにもたくさん広めてほしい。

脳卒中のおそれ
突然の激しい頭痛、回転性めまい、意識障害、運動障害、ろれつがまわらない、視野がおかしくなる、ものが二重に見える…といった訴えがあれば脳卒中の疑い。抗血栓薬の服用など確認をしておくのも重要。

脱水症の予防
ぐったり、元気がない、熱がある、尿が濃いまたは少ない、脇の下が乾燥しているといった症状がある。見つけたら水分を取らせることはもちろんだ。

感染症の予防
次のような記述がある。「能登半島地震後の避難所において嘔吐・下痢を呈する多数の避難者がおりましたが、地震発生前より能登半島においてノロウイルス胃腸炎が流行しておりましたので、直ちに避難所でのノロウイルス胃腸炎の集団発生と推測することができました。 」ちょうど夏まっさかりである。何より感染症には気をつけたい。

避難所では積極的にお隣さんと会話し、特にお年寄りや慢性病の方には気をつかいたい。「健康状態どうだろう」「変化がないかな」と目を見て、動きを見て、言葉を聞いて、お互いにチェックし合うといいだろう。

に関してはどうだろうか。公益社団法人大分県薬剤師会の『災害時の薬剤師必携マニュアル』は支援薬剤師の活動教育に始まり、被災地での救援活動がもれなくだぶりなく、わかりやすくまとめられている。これは薬剤師必携だ。慢性病のために薬が生命線の人もいっぱいいる。食料もさることながら、薬も生死を分かつのである。ここにも気をつかいたい。

まずは以上です。有益な情報を見つけ次第、追加していきます。

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