過去を引き上げる鎖を太くするもの

ある高齢者研究専門家の話を聞いた。ハッとしたひと言があった。

たとえばここは近未来のえんがわである。ボケたお年寄りがお茶をすする。独居なので、そばにいるのはロボットである。お話し相手だ。ロボットが「何が好きですか?」と老人に訊く。「カメラが趣味だった」と答えたとしよう。

ロボ「何を撮ってたんですか?」
老人「ペットや風景かな」
ロボ「どんなペットですか?」
老人「猫だよ」
ロボ「どんな写真が心に残ってますか?」
老人「そうだな…」

老人は不慣れな手つきでスマートフォンをタップして、ロボットに画像を見せる。ロボットは画像を読み取り、胸のディスプレイに映し出す。

ロボ「やんちゃな猫ちゃんですね」
老人「うん。わしが落ち込んでいると寄り添ってくれてな。とんと胸に乗ってきてくれた。こいつがいなかったらわしはとっくにあの世さ」
ロボ「もっと話して。聞きたいです」

ロボットは老人との会話を記録•蓄積して編集をする。そこから対話するから、次からの会話内容が深くなる。映像付きだからあれあれこれこれがなくなる。こういうロボット開発がされているそうだ。そして専門家のひと言。

「高齢者の心を引き上げる鎖は〝過去〟で太くなる」

過去のことを何度も思い出すとボケが改善するが、新しいことに挑戦するとボケが進行するという。失敗を怖がったり億劫がるのもあるだろう。新しいことを面白がれないのかも。ボケないよう趣味をとか、どっか旅行したら、というのが逆によくないのだろうか。

つまりノスタルジーは年寄りにとってアイデンティティを取り戻す行為なのだ。そこを認めて強めてあげると生きがいが増す。単純なことだが刺激的だった。お年寄りのタイムマシン旅行やどこでもドアは、高齢化社会におけるバック•トゥ•ザ•フューチャー、つまり残された未来を生きぬくカギなのだ。そんな小作品をいずれ書いて見ようと思った。

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