in music we bravo!(エル•システマコンサート記)

 連休は良いスタートがきれた。といっても自由業なので休みはない。
 今朝はまず次の「ドクターの肖像」の原稿構成を考えた。心療内科医の原稿修正もした。それからあまりに粗末なものを食べてお昼過ぎに電車に乗った。目指すは渋谷の音楽会である。千代田線に乗ると母娘が座っていた。どちらも美人であった。ふと別の母娘を思いだした。そこも二人とも美人で、母は音楽をやる。そんな連想があって今日の音楽会はオーケストラである。

 楽団員は地方の小学校2年から高校3年の子供達だという。だが児戯ではなく第一線のプロが指導し、ベルリン•フィルとも共演したことがある。だが心の底では児戯かもナ、それもチャリティなのだからナ、と思っていた。会場のロビイで「初めて楽器に触れる体験会」があった。案内を読むと、今日のオーケストラもほんの数年前まで楽器を触ったことがなかった子たちばかりだという。何しろ東日本大震災の翌年、2012年にエル•システマジャパンは、被災地の子供たちを音楽で支援するために設立され、それから彼らは音楽を始めたのだから。

エル•システマジャパン オーケストラフェスティバル  2017」、主宰団体の代表理事の菊川穣氏が挨拶に登壇した。彼はアパルトヘイトの激しい頃、ユネスコの仕事で南アフリカ共和国にいたそうだ。仕事帰りにジャズ喫茶やクラブによく行った。壁に書きつけがあった。

  in music, we trust. (音楽でなら分かり合える)

 人種差別はまだ無くなっていない。我々東アジアの国々だって分断しあっている。ちっとも分かり合えていない。
 さて演奏である。1曲目はバッハのブランデンブルグ協奏曲で、かわいらしいコンマスが音を出した。すると長髪の指揮者浅岡洋平さんが現れた。知人の息子さんだろうか。始まるとのめり込むように聴かされた。掛け値なく見事な演奏である。児戯という言葉はぶっ飛んで、期待感が走った。相馬市と大槌町で家族が津波で分断された子供たちは、今朝5時に起きてバスに乗って東京に着いた。演奏会のために1日10時間も練習する子もいる。練習の合間には甘いものをみんな食べてホッとするとか微笑ましいですね。そんな話をMCで披露するのは、フェローと呼ばれるプロの演奏家たちである。

 そして2曲目はバッハのエール、いわゆる〝G線上のアリア〟である。コンサートミストレスが来て音を出し、浅岡さんの指揮棒が動き出した。そのとたん、ぼくはなぜだか涙が流れ出した。子供たちのバイオリンやヴィオラの音の向こうに見えたのだ。ひとりひとりの物語があるのが見えた。語りきれない声が聞こえた。押し寄せてきた海に引き裂かれ、それを乗り越えて音楽と出会い、毎日練習する風景が見えてきた。マアそれはぼくの想像である。だが彼らの音楽がそんな情景を想像させるなんて思いもよらなかった。ただ涙が止まらなくなった。

 モーツァルトのディヴェルトメントも良かったが、カノン(パッヘルベル)が印象的だった。自分の仕事のことだが、文を書くということは自分の読者を見つける旅だと思っている。見つからない限り良い文にならない。相馬と大槌の子供たちが、演奏を聴かせたい人は誰だろうか。誰に聴いてもらいたいのだろうか。亡くなった人か、生き延びた人か知らない。だけれどもきっとそれがあるから、ここまで情感のある演奏できるのだろう。

 休憩後は生オケで初めてきくバーンスタインの〝ウエストサイドストーリー〟である。これがさすがの演奏なのはフェローつまりプロだからだが、ピーッと笛まで使ったバーンスタインのクリエティブにも改めて舌を巻いた。しかしいろんなバックグラウンドを持つ演奏家が、中には相馬に住み込んでまで、子供たちを支援している。浅岡さんの姿も壇上に見えたが彼女のその一人だろう。

 ラストの〝交響曲第五〟で気づいたが、そのフェローたちが子供たちの隣に座って演奏して、楽譜をめくっていた。隣にいればいろいろと心強い。ベルリンフィルをアッと言わせた第五の演奏は素晴らしかった。聴き惚れました。まさにブラボーが飛び交った。「in music we can change destiny」と思った。音楽さえあればつらい運命だって変えられる。いやこうも言える。


 in music we bravo!(音楽があればブラボーだ)

 ブラボーは感嘆詞だから動詞にはならないが(笑)マア許せ。勇気を持つ、という仏語の原意もあるそうだし。アンコールまでちゃんと用意されているのはさすがである。最後まで聴いたら、もう一つメッセージが聴こえてきた。それはー

「祈りましょう」

 災害で亡くなられ方々に対してはもちろん、いまだに体や心に傷を受けている方々へ。言葉だけではなく音楽と一緒に祈りを送れば、それは旋律となって響きわたり、どこまでも広まるから。どうもありがとうございました。

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