ムダのある医者は魅力がある。

ドクターズマガジン2017年3月号の肖像は本永英治氏、沖縄県立宮古病院の副院長である。2月号の赤星隆幸医師に続いて、ぼくとしては良いものが書けた。本永先生を語る切り口はいくつもあるが、ひとつ上げるとすれば、これだ。

知ること。

本永医師は自治医大卒業後に初期研修を終えて、離島医として初めての勤務は伊是名島であった。その時に自分の医療技術の未熟さも痛感したというが、彼のその後の生きかたの背骨となったイベントがあった。〝知の巨人〟との出会いである。

三石巌氏は東大理学部卒業後、様々な大学で教授職を勤めて定年後は著作に専念され、90才まで圧倒的な知の著作を生み出した。児童向けの科学本、分子生物学の教本、『ロウソクの科学』や『偶然と必然』など著名書の翻訳も手掛けた。その知は人類をおおうほどの大きさがあった。それに触れた本永医師もまた知の巨人になってゆく。

話しは変わるが、昨今千葉大や慶応大など医学生のひどい犯罪が目に余る。あらためて医師の教育をどうするべきか?は大問題である。経験ある中堅の医師が日経メディカルのサイトに「医学部1年〜2年の教養課程の代わりに、看護実習や介護実習をさせて、人間教育を施すべきだ」と書いていた。

うーん…そうだろうか?と思っていたら、コメント欄には若手医師の反対意見が集まっていた。「教養は必要である」「幅広い知識こそ医師には必要」「何もできない実習をさせるより立派な人になる教養を身につけるべし」などなど。

その通り。患者の話しを聞き、人生を理解するには、人間としての経験や幅が必要なのだ。本永医師も医療技術だけでなく、人間理解が自分に少ないのに悩んで、知の巨人と交流し、宮古の方言を学び、自然を知り、歴史を知ってきたのだ。だから彼はこんな良い顔をしているのだ。

撮影 稲垣純也カメラマン

ムダを知り、ムダをやる。ムダこそ人間回復、ムダこそ仕事を良くする方法である。効率優先でムダをとったら、日本に何が残っただろうか。縮んだ心と縮んだ仕事、つまりデフレであった…

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