シュバイツァーの『水と原生林のはざまで』

若い頃に読んでいたら、猛勉強して絶対医者になった。

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年末年始の集中読書、3冊目はシュバイツァーの『水と原生林のはざまで』(岩波文庫版では〝シュヴァイツェル〟)。先月読んだ氏の自伝より短く、話題別に章立てされているのでずっと読みやすい。

シュバイツァーは神学者としても演奏家としても成功していたのに、30才から「人のために尽くす」と宣言して医者になった。30代後半でアフリカのフランス植民地ガボンのランバレネに赴任した。診療所建築から始まった診療活動は、ひと言で言えば…

「よくやったもんだ」

である。本書は氏の第二次大戦前の4年半に渡る診療活動をつぶさに描く。赤道直下の卒倒する熱さ、河馬や象や蠅や蚊そして白蟻など、凄まじい自然だけでなく、彼が〝土人〟と書く現地民の生態のおもしろさ、雇用や教育の苦労もものすごい。

後半に入ると、1914年1月から6月の章で、当時の医療行為が詳細に描かれている。実に興味深い。西洋科学を用いながら現地でできる治療、手術に投薬。洞察と智恵がある。そして彼が単なる医師でないことは『原生林の社会問題』という章に表れている。黒人がサボったり盗みを働いたり、お金が入ると火酒を煽って散財する理由を、

黒人は怠惰なのではなくて自由人なのである。

と喝破する。国は税を課して働かせ、消費の欲望をかきたてる。だがそれは黒人に通用しない。彼らは職業を持とうとしない。そういう価値観がない。文化と植民の利害が一致しないため、飢えは続き、原生林はただ伐採が進む。白人の権威は目の前で睨まれている時だけ通用する。

シュバイツァーの医療活動は人間愛や献身だけでなく、鋭い社会的洞察にも支えられていた。実は人の価値観や社会背景まで見ることは、本来医師にとって必要なのである。病を診るだけではなく、患者を見るとはそういうことなのだ。

結論。そんじょそこらの医師の本を読む前に本書を読むべし。本書には人生を変える力がある。

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