ドクターズマガジン『ドクターの肖像』、2016年11月号は大物だった。
国立国際医療研究センター理事長の春日雅人氏(撮影は稲垣純也氏)。インスリン作用の発見によって、糖尿病の研究と臨床の流れを変えた男。世界的な研究には国内外から数々の勲章がもたらされた。さぞやアグレッシブな方かと思えば正反対。実直で控えめで潔さがある。世俗的な栄誉よりも研究生活が愉しいという人だった。
その人となりは伝えられたと思うのだが、今回は特に2つ去来することがあった。ひとつは「難しいことをいかにわかりやすく伝えるか」。
テーマはインスリン受容体の機序の発見という分子生物学レベルの研究である。文科系ゴチゴチのぼくにとってだけでなく、医師にとっても分野が違えば理解はむつかしい。受容体、抗体価、免疫沈降、チロシンキナーゼ、リン酸化…こんな言葉を並べつつ、なんとなくわからせて、しかも研究者を生き生きと伝えたい。格闘した結果は読者の判断だが、ぼくなりには「そこそこ勝てた」と感じている。
もう一つは、米国留学した春日氏の寒風の日々である。留学すればテーマが与えると考えた彼は甘かった。テーマはもらえず研究も実験なく、ただ過ぎる日々。ボスに正直に「テーマを下さい」と言うと、こう返答された。
「マサト焦るな。ほら、スミソニアン博物館ってあるだろう?あそこで展示物でも眺めてきなさい」
要は「自分で考えろ」という婉曲な突き放しである。他国でこれはきつい。ぼくもサラリーマン時代、小さいけれど同じ経験がある。
米国に駐在した時「商材を探せ」と言われた。英語も満足じゃないし、どこに何があるかさっぱりわからない。春日医師は図書館でかなりの数の論文を読んだそうだが、ぼくもUCLAやUC Irvineの図書館にずいぶん通った。何もなかった。そのうちヒントをくれる人が表れたが、あれはつらい日々だった。
ドクターの肖像、今年は11人書かせて頂いた。1月号から12月号まで見渡して、金平永二医師、佐竹修太郎医師らはおもしろく書けたが、ひとりあげるなら春日先生である。内容は難しいけれど、決して難しく書いていないので一般の人も読んでほしいものです。
うわぁー!また気になります‥‥
読んでみたい!郷さんの最高傑作!
mimoさん、ありがとうございます😊
最高傑作にはまだまだですが、それよりも、うまく書けたかな、というイメージです。mimoさんが「うまく歌えたかな」って思う時と似てると思います。ありがとうございます〜!