1年越しの仕事がヒトヤマ越えた。“お客様のある企画原稿”の初稿を脱稿できた。「書けた!」という音が鳴った瞬間(原稿が終わる時には音が鳴る。文に命を賭けるライターなら聞いたことがあるだろう)、涙が出た。嬉し涙が、ぽろり。
この仕事があってよかった。
心底そう思えた。谷また谷でいったん諦めかけたけれど、高い山に登るようにつづら折れの山道を登って、ようやく山頂が見えるところまできた。「企画原稿」なので出版できるかどうかはわからない。だが正直、内容はおもしろい。
テーマはある心療内科の医師の半生である。ユニークな診療活動があり、生きざまがある。迫真の診療ドキュメントがあり、患者のもがきと笑いがある。医師の書いた文と患者手記や医師との対話、患者会の語り合いが盛り込まれた。先生のユニークな診療通り、ユニークな文になった。
ファイルの日付を見れば、昨年秋に初訪問している。それから「企画書」を書いて某出版社に提案した。通りかけたが結局ダメだった。そこで止めることもできた。だが年を越して春先に医院に訪問した。患者の集いをテープ起こしすると、人がもがいていた。キーワードも降りてきた。
「家族」である。その周りでウロウロ考えていると、全体像が見えてきた。これは書かないといかん。
だがそこからもまだ時間がかかった。先生に何度も叱咤され、諦めかけられた。こっちはアタマが鈍いので、「ぐわぁっ」と心に降りてくるものがないとわからない。それがないと書けないのだ。遅筆の人という表現があるが、あれは「ぐわぁっ」と来るまでに時間がかかる人のことだと思う。しかも「ぐわぁっ」が降りてきて初稿までは来たが、世の中に通用するかどうかはこれからです。がんばります。
ひとつ思う。いろんな文を書いてきたが、なんだかんだ医療の周りの仕事を長くしてきて、「医師の物語」だけは自分の仕事にできるのかもしれないと。
ピノ子がピノ小屋にぴょこぴょこと…(^^
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