ある本に合気道のことが書かれていた。
合気道の基本原理は「曲線」ですべての所作は円を描くようなイメージがある。その曲線に合気道の世界観が詰まっている。真っ向からぶつかり合う剣道や柔道、空手と異なり、相手の力、動き、気持ちを読み取って、相手の気と自分の気を合わせることによって場を制する。
ぼくは合気道というものをまったくやったことはないが、いつも「文を書くとは合気道である」と言う。その意味は、相手を受けとめて相手の力で書かせて頂く。人を描く「ドクターの肖像」インタビューはまさにそうである。
相手の動きを読み取り、相手の気持ちに自分を重ねる。円の動きのように、自分と相手が重なり合い触れ合って、ベン図のように重なる面積が多くなった時、良い文が生まれる。インタビューやドキュメントを書こうしたことがある人ならわかってくれると思う。文は「書きに行って」はならない。相手が来るのを待たねばならない。
もちろん違う書き方もある。対象者をこれでもかこれでもか、と突き上げてゆくように描いてゆくスタイルもある。それはまさに剣道のように相手と立ち向かい、相手を追い込んで制覇する。「突っついて書く」スタイルである。読ませてしまうのだが、読むと疲れる(笑)。
一方つまらないのは「寸止め」の文である。
空手の寸止めのように相手にタッチせずに上っ面を書く文である。寸止めゆえインパクトも無く判断のしようがない。書き手はせっせと書いているつもりだから厄介だ。「読んでみれば解説文」である。
だから作文は剣道でもなく寸止め空手でもなく、合気道がいい。
インタビューでの対象者を描く上でのことだけでなく、読者に対しての構えも合気道がいい。すっと懐に入り、じわじわと距離がつまり、いつも間にか重なり、化学反応を起こしている。こういう文が書きたいものだ。いつか合気道作文教室を開けるようになりたい。
執筆とテープ起こしと就活講義にまみれた日がようやく終わった…おっとまだ猫が遊んでくれ…とうるさい…^^;
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