チャーミングな伊東先生の号が納品された。ドクターズマガジン2016年10月号。
長崎大学の副学長の伊東昌子先生の『ドクターの肖像』はこんな出だしで書いた。
下ばかり見ている子だった。本を読み、外にはあまり出ず、物静かな女の子だった。大分県に伝わる民話「きっちょむさん」を読み耽っては、一人でくすくす笑っていた。
今のお姿からは想像ができない無口で内向的な性格だった。それがゆえもあってだろう、高校時代にある病気になった。それを克服し長崎大学で医師となり、骨の分野で世界的な業績をあげた。何百人の前で講演をする人になり、教授そして副学長に昇りつめた。
だが少女期の内向的なところは消えたわけではない。それは次第に昇華して「人を助ける人」になった。自分が苦しんだ分、苦しむ人を理解する人になった。そこが素晴らしい。
原稿もまた生みの苦しみがあった。入稿後、掘りが浅いと言われてぼくも同意して、先生にメールを送った。「もうひとことください」伊東先生は飛行機上からメールをくれた。深くなったが、編集からもう一歩深くとオニを言われて、印刷ギリギリでラストを書き替えた。するともっと良くなった。
次号(2016年11月号)は糖尿病の大家。国会図書館で文献を漁り、医家向けの糖尿病本を買い、師弟関係を調べ抜き、もちろん英語の論文もチェックし、特に英語のプレゼンは何度も見た。生みの苦しみを経て、今日一次関門を突破。
インタビュー→テープ起こし→キーワード→構成→最初と最後の一行、それから執筆。
肖像でのぼくの作法である。テープ起こしは調査を含めて3万字くらいになる。キーワードは対象者をひと言で表すワード、構成はドラマチックに、最初と最後の1行が浮かんだらようやく書き出す。書き出すまで1週間。だから疲労で倒れる。おもしろいと言ってくれるひと言のために。
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