生きざまが語られているからこそ、読んで学べる。いくら偉い人の話しでも、人間性が見えなければつまらない。
日経の連載で『「タビオ」創業者の靴下一徹人生』がおもしろい。『靴下屋』の創業者、越智直正氏の「語り話し」である。
連載3回目の借金地獄の話しは、ホント濃すぎ。明後日に迫る期限の手形530万円、もうどうしようもない。不渡りかと腹を決めて付き合いのある食品スーパーの社長に挨拶に言った。
「ごっつい借金、もうあきまへん。明後日不渡りでますさかい、堪忍してください」
すると社長はいくらあるのだ?と訊いた。7000万あります。社長は驚いた。担保もなくて7000万もよく借りれたな!と越智氏を褒めた。オレに借り方を教えてくれと。
ハッとした越智氏は「オレは凄い」と切り替えることができた。
猛然と金策に走り330万まで借りれた。あと200万を残して、期限日のお昼になった。付き合いのある信用金庫の支店長を訪ねると不在で、待っているうちに椅子でウトウトしてしまった。何しろ3日寝てなかった。昼飯から帰ってきた支店長は越智氏を揺り動かした。
「どうしたんや」
「あと200万、工面できまへん」
そんな状況で眠れるほど肝が座っているのか!とびっくりした支店長は、支店長決裁で200万を融通してくれた。肝の座った男たちの時代である。他にもキモとなる話が満載なのでぜひ読まれよ。
この文、著書『靴下バカ一代 奇天烈経営者の人生訓』から編集したそうだが、記事の語り話しを書いたライターの力量はすごい。ここまでぼくは書けるか…と唸らされた。
一方、数日前に図書館からコピーしてきた東大の糖尿病の権威たちの対談記事がある。眠くて読めん。医学的内容が難しいせいもある。だが対談にシナリオが見え見えで、センセセンセの持ち上げごっこで、読むに耐えななかった。かろうじて東京大空襲あたりの被災体験はよかった。そこには医師の生死が語られていた。
人間を書けーというメッセージ。靴下バカを手本にしよう。
ひと雨ごとに秋が来るのだとうたったのは、中原中也だったか… 心はもうとっくに秋待望です。
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