愛すること

3月に入った頃だった。今年就職するある新卒の女性からアドバイスを求められた。「愛を取るべきか、仕事を取るべきか、悩んでいます」

共に大学を卒業する彼は東京勤めである。一方彼女の就職先は全国展開の会社で、新幹線で3時間半かかる地方勤務の辞令をもらった。ぼくは少し迷った。彼女は新卒である。淋しいだろうが経験も大切だと思った。そこでこうメッセージを返した。

「新卒なんだから我慢して地方で働いてもいいじゃないかな。遠距離恋愛だってなんとかなるよ」

結局彼女はその会社への入社を辞めて別の道を取った。「愛が深いな」と羨ましく思いつつ、ぼくはそのことを何度も考えた。本音から考え直してみた。意見が変わった。

自分だったら愛する人と一緒にいたい。

もう20年も前だが、ぼくは米国に単身で駐在したことがあった。その時ひとりでも苦痛ではなかった。家事ができるとかではないし、会社も家族手当まではくれない事情もあったが、本当の理由は違った。当時からすでに妻に愛がなかったのだ。もしも愛していれば「家族でなければイヤだ」と駄々をこねたはずだ。それはなかった。つまり企業の命じる転勤とは「愛していますか?」という判定テストにもなる。

たいていの会社に天職などない。愛する人と離れてはいけない。勤めはきっぱりと辞めてもいいのだ。

愛することはぼくにはまだむつかしいことでもある。

愛する人に冷たくされて虚しさを覚えた。なんで愛してくれないのかと嘆いたことがある。嘆くなんてまちがっている。

自分が愛されなくてつらいなんて、そんなのは愛ではない。むしろ愛する人がつらいことに思いを馳せなくてはならない。その人を愛するなら、どんなことがあろうと、どんなに疎まれようと、愛を降らせつづけないとならない。愛する人がしたいことに背中を押さねばならない。愛する人が健やかになるように尽くさなければならない。

愛する人を愛し続けることは、この世で一番前向きなことなのだ。

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今年初の冷やし中華 with トマト&キュウリ&くちゃくちゃ錦糸卵。

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