住宅地に界隈があるように、会社にも界隈がある。
ギャラリーのあるビルのテナントさんにも、あらかたビルが閉鎖されることが伝わった。そのうちのひとつのテナントさんが言った。
「そんな…ショックです。ここは落ちつけて良かったの。それに私のクライアントにもこのビルの近くのオフィスを奨めたし…」
申し訳ない…とオーナーでもない(管理人の)ぼくだが気の毒なので、この界隈に物件を探してみますよと言った。それをcherryさんに言うと…
「中古カメラ屋さんのビルの4Fが空いてるみたい」
あのちっこくて古いビルか。さっそく見にゆくと案内板の4Fは空白だった。だが「空室あります」とは出ていない。ドアを開けてみてびっくりした。
急な階段!女性にはムリだろう。ぼくも転がり落ちそう…^^;
神田柳原通りという古びた界隈にふさわしい建物である。だがこのビルの隣の水道管屋も更地になり、マンションが建つ。その向いの大正の終わり頃の建物、海老原商店も遂に往った。
どんどん近代的なマンションやビルになってゆく。仕方ないのだが…
たいていの人は摩天楼のオフィスに憧れる。ぼくもサラリーマンをしていたとき、オフィス街の30階ビルの18階だった。最初のうちは誇らしかった。だがだんだん息が詰まってきた。摩天楼には馴染めなかった。
そこから古びた神田界隈に来てほっとした。ぼくには合理的なビルより路地ウラの古くてちっぽけな建物で、神社のある界隈が合っていた。
ふとこの界隈で悩んでるある人を思った。彼はきっとこの通りや町並みが合わなかったのだ。華麗なる摩天楼ビルの方が好きなんだろう。そこがボタンの掛け違いだったのではないだろうか。
転職するとき、会社を界隈で選ぶ人はあまりいないかも知れないが、あんがいツボなのだ。摩天楼好きならそっちへ、こじんまりならこっちへ。それもまた自分らしさの一表現である。
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