詩人エミリー•ディキンソンの激情

詩人エミリー•ディキンソン/Emily Dickinsonを描いた映画『A Quiet Passion』がベルリン国際映画祭で上映された

AQP-Young-Emily-Dickinson-Schoolroom-Holyoke2-e1438684893956-640x240

19世紀のアメリカ詩人、ぼくは“Wild nights”の詩を始め、けっこう好き。彼女は今でいう「ひきこもり」で「変人」と言われた。書いた詩は1800編、生前に公になったのは7編のみ。今、世界中で彼女の詩は愛されている。

dickinson

好きな割には詩集も伝記を読んだこともない。映画が日本で上映されるなら(主演はSATCのシンシア・ニクソンだからされるかも)ぜひ鑑賞したい。本で予習しとかないとね。

まずはネットで。すると一段深くエミリーを理解できた。『I’m nobody! Who are you?』の翻訳を考えた。彼女の代表作のひとつである。

I’m Nobody! Who are you?
Are you – Nobody – too?
Then there’s a pair of us!
Don’t tell! they’d advertise – you know!

How dreary – to be – Somebody!
How public – like a Frog –  
To tell one’s name – the livelong June –  
To an admiring Bog!

次の訳は「日本で流通している訳」である。

わたしは誰でもないひと! あなた 誰?
あなたも――わたしと同じ――誰でもないひと?
だったら わたしたち ふたりでひと組ね?
口には出さないで! みんなに知られてしまう――いいわね!

退屈なものね――(ひとかどの)誰かである――っていうのは!
よくご存じの――カエルみたいに――
六月のあいだはずっと――うっとりする沼地にむかって――
自分の名前を告げている!

ピンとこない。まず「誰でもない人」て日本語じゃないし(笑)カエルってなんで突然出てくるだろう?この訳はまったく理解できなかった。あれこれ見て『Dickinson’s Poetry』と『歌詞翻訳成田悦子』でわかってきた。

この詩は彼女の「あがき」である。「プライド」であると同時に「卑屈」がある。誤訳を恐れず訳してみよう。

あたしは名も無き人!あなたは名の知れたお方?
それともあなたも無名の人かしら?
それならお互い様ね!
しぃー!宣伝されてしまうわよ

有名になるなんてまっぴら
そんなのケロケロおしゃべりする
フランス人が沼のカエルを褒めるみたい
あたしはまっぴらごめん

「あたしは誰でもない人」とは「あたしは名も無き人!」である。ペアはお互い様という意味でいい。問題は2節目で、カエルとはフランス人のこと。英英辞書に「パリに居る間にジョークを言い続けるおかしなカエルさんに出会った」と文例があった。恐らく沼(Bog)と掛け合わせているのだろう。カエルが「あたしたち」かどうか微妙。

ぼくの拙訳の方が正確ならば、エミリーという女性のねじくれた性(さが)が見えてくる。世間への怨みと自分への戒めが見えてくる。映画の『静かなる熱情』は良いタイトルだが、「静か=穏やか」ではない。それは「表には出ない激情」なのである。

詩人とは激情の人だ。静かなる詩人なんていてたまるか。

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中