今朝のニュースで口についた唄は…
♪ソ、ソ、ソクラテスかプラトンか♪
♪ニ、ニ、ニーチェかサルトルか♪
野坂昭如氏逝去。文壇の巨星、いや映画監督の大島渚を壇上で殴った逸話から「挙星」と書くべきか。真っ先に思い出したのは、氏の作詞によるCMソング『ソクラテスの唄』だった。
1976年のCMだというから、誰も知るめえ。たしか野坂氏がサントリーのウイスキーを抱えて、つ、つ、つ…とステップ踏んて蹴り上げるような… 探したら、youtubeがあった。大昔なのにすごい。
ウイスキーはサントリーゴールド。この唄には2番があった。
♪シェ、シェ、シェークスピアか西鶴か♪
♪ギョ、ギョ、ギョエテかシルレルか♪
♪みんな悩んで大きくなった♪
♪オレもお前も、大物だぁ!♪
念のためギョエテはゲーテ、シルレルはフリードリヒ•シラーである。哲学者の次は劇作家というのは、ちょっと考えると象徴的である。
代表作であり、野坂氏の生きざまの背骨には、兄妹の生死を通じて戦争の悲劇を謳いあげた『火垂るの墓』があった。彼はそこに「実存」すなわち不安や苦しさ、はかなさを越えた人間のあるべき姿を描いた。
もう一つの代表作である『エロ事師たち』では、エロ動画販売や乱交パーティによって勃起を獲得しようとした男のエロく恥ずかしく、おかしくもある人間性を描いた。
生存という哲学、戯画化された世界。彼はその二つの世界を行きつ戻りつした。つい字余りの唄をこしらえちまった…^^;
♪ホ、ホ、火垂るの墓かエロ事師か♪
なんてことをブログに書こうと思って夜道を歩いていたら、知人と出くわした。リンゴをひとつくれた。
そういえば火垂るの墓でこんなシーンがあった。節子に清太がりんごを渡すのだ。
「節子、りんごやでさ食べ」
節子は嬉しそうにかぶりついたが、それは芋だった。「兄ちゃんちがう」と節子は言った。「芋かてええやないか、はよ食べ」と兄は言ったが、ふたりとも鼻声になってしまった。
野坂氏は深遠な言葉遊びを貫いた文芸家だった。合掌。