風邪気味である。昨日の出張のせいか、電車内でうつされたか、シャワーを浴びたせいか… いずれにしても頭が重く熱っぽい。
そんなときは鍋にかぎる。ひとり野菜鍋。
大根白菜豆腐饂飩卵葱、以上。風邪薬を飲むより、いっぱい野菜を食べて抵抗力をつけて、熱いお風呂で温まってぐっすり眠る。それが一番。
ふと思い出した光景がある。ある地方病院に仕事で訪れて、取材開始時間を待っていた。外来ロビーのソファにどーんと寝ているおばあちゃんがいた。そばに歩行車がある。具合が悪いのかな。独りで付き添いもいない。
やがて院内薬局の薬剤師らしき男性が来た。おばあちゃんはよろよろ起き上がった。薬剤師は百均で売ってる靴箱くらいの大きさのコンテナを持っていた。薬袋が5つか6つ入っていた。ひとつひとつ説明しだした。おばあちゃんはうなずくけれど、あんなに飲めるのかなあ。
その光景を同行したカメラマンに話すと、彼は言った。
「必要な薬はまだしも、その副作用で血圧を上がると下げる薬、胃が荒れたときの薬、お腹を下したときの薬…と際限ないよね」
一か月分の薬は年寄りには重くて、帰りに買い物にも寄れやしない。まして飲みきらず余らして捨てることもある。おっとぼくも目薬忘れがちだ。
年取ってきて思う。手術も薬も必要なものはあるけれど、身体の衰えは必ずくる。あまりジタバタするのも自然じゃないのだ。日頃から自然のものをバランスよく食べて、適度に運動して、睡眠をとって、生き甲斐をして、そして死ぬ。弱いぼくはジタバタするんだろうけど、なるべく自然に逝きたい。
とここまで書いてバスボムをドッポンした。オウチ温泉に入ってホットしたのだ。湯船で思った。
逝くその日まで、できるだけ自分に自然になりたい。自然な思いから自然な行動をしたい。たとえば、誰か一人でも「自然に善く生きたい」と思わせる文を遺したい。おもしれえなと言われるモノづくりをしたい。何よりも独り鍋は寂しいから、ふたり鍋がいい(-^^-)。自然に還るその日に備えるために。