目がよく見えるようになって人生が変わった。
いろんなシーンでそれを実感するが、ここ数日、朝起きると出窓から風景を撮っている。コンタクトをつけずにこんなことをしたいとは思わなかった。
おとついの日の出前。グラデーションにラインを引いてみた。
昨日は朝日がパレットからはみだした。
今夜は食べてみたくなったフルムーン。
もっと卑近な例というか近距離の例でいえば、打ち合わせする相手の顔がよく見えるようになった。相手は女性。手術前に初顔合わせしたときは、澄ましている人だと思った。術後に見えるようになったら、なんだかとても温かい感じだった。
前回は初対面で今回は二度目、話し合いも上手くいった、そういうことはあるんだが、視力のせいで人を見間違えていたとしたら…
そうだ。向こうから歩いてくる人がはっきり見えた。
以前は30メートル先の人なんてさっぱりわからなかった。へたをすると数メートル先の人もわからなかった。会うのはどうしたものか気まずさがあった。でも笑っていた。ぼくも笑った。見え過ぎるとうれしいやらかなしいやら。
ぼくの心はまっ黒。こすっても落ちない後悔のシミだらけ。ぬぐっても染み出る目の水だらけ。そいつを朝のグラデーションブラシでぼやかしてもらいたい。それは暗い時代から明るい時代へのアクロス•ザ•ユニバース。地球って美しい。