通修という愛国心

医師になる道は一本ではない。医大受験コースもあれば、親の後継もある。社会人をやめて目指す人もいる。自衛官としてなる人もいる。

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ドクターズ•マガジン2015年7月号の『ドクターの肖像』は、世界的な心臓外科医、尾崎重之医師である。心臓を包む心膜をつかって機能不全となった大動脈弁の形成を行うユニークさはまさにスーパードクターである。ぼくの一文を尾崎先生も喜んでくれたそうだ。自画自賛だが、おもしろいですよ。

およそ一流の心臓外科医には華麗なる学歴はない。むしろ腕を磨くため渡り歩いた道程が皆ユニークである。尾崎先生もしかり。

ひょんなことから防衛医大に合格した。この自衛官を育てる学校は「無料」である。学費や寮費が無料、衣服も貸与なら手当まで支給。その代わり卒業後9年間は辞められない。辞めるときはその経費を返せとなる。さらに問題は「つまらない」ことだ。

卒後は自衛隊の基地内に所属する。ところが自衛隊員に重病は少ない。風邪と水虫の患者しかこない。だから退屈する。ゆえに腕も落ちる。知識も増えない。それがつらくて1/3は9年未満で辞めるという。

尾崎医師も辞めようと思った。上官に相談すると「辞めるのは困る、それなら通修したらどうか」と勧められた。つうしゅうとは、最大週2日、外部の医療機関で臨床経験を積む制度である。この制度を使って尾崎先生は亀田総合病院で心臓外科医としてスタートした。

若手医師を見捨てないこの通修制度に、国のやさしさを感じる。

部隊勤務だけでは医師の技量は上げにくい、ならば外で、そしてそれで目覚めたら途中で辞めても仕方ない(ただし教育費の返還義務はある)、という国のおめこぼしである。懐が深いじゃないですか。

自衛隊の歌姫もそうだが、多様性を認めるところは「へえっ」と思う。

もちろん実際の自衛隊は集団行動であり、“余計な思想”はシャットダウンして、国を守るというひとつの目標を日々高めるはずだ。そんな中で通修や歌姫には、軍隊というより人間くささを感じるのだ。

ほんとうの愛国とは武器を持つことではない。他国の領地に戦争支援にゆくことではない。まして、時の政府の言いなりになることでもない。

どんな立場であれ、日本人らしくしっかり生きることが愛国である。自分の興味のおもむくまま腕を磨いて、世界屈指の心臓外科医になればいい。それこそ愛国の世界版じゃないだろうか。

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